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【大阪・堺モデル始動】民間屋根の「余剰再エネ」を市庁舎へ供給
アイ・グリッドと堺市が挑む都市型GXの最前線

2026/03/17

さまざまな課題を抱えながらも、更なる創生の可能性を秘めている地方。エネルギー分野でも地方と企業が協力することで、地域課題と社会課題の解決に一歩踏み出すことができる。

脱炭素化(GX:Green Transformation:グリーントランスフォーメーション)を推進するエネルギーサービス企業の株式会社アイ・グリッド・ソリューションズは2月26日、大阪府堺市内の民間施設で発電した再エネルギーの余剰電力を集約し、堺市役所本庁舎へ供給する「余剰電力アグリゲーション」の取り組みが本格始動したと発表した。

株式会社アイ・グリッド・ソリューションズによる自治体×再エネ循環「堺モデル」発表会

都市部特有の「再エネ適地の不足」という課題を、AI技術と官民連携で解決するこのプロジェクトは、全国の自治体が注目する「堺モデル」として、日本の脱炭素化を加速させる試みとなる。アイ・グリッドが取り組む「GXシティ構想」の社会実装モデルだ。

■ 都市の限界を突破する「堺モデル」の仕組み

都市部では、メガソーラーを建設するための広大な土地が不足している。一方で、公共施設の屋根は面積が小さかったり、築年数や構造上の理由で太陽光パネルの設置が困難だったりするケースが多い。

また、大型開発の中で適地が少なくなる中で、山を切り崩すような強引な開発案件が発生すると、地域住民にとっては景観の悪化や自然環境の破壊などトラブルも発生しやすい。さらに、地域で作られた電気が実際にどこで使われているか分からないという問題も。発電所を受け入れるだけで、実際の電力は自分たちの地域でなく都市部に送られてしまうと、地域住民との軋轢も出てくる。

この「公共施設の構造的限界」や地域の課題を打破したのが、今回の「堺モデル」だ。アイ・グリッドは、市内のホームセンターや物流倉庫など、面積の広い民間施設の屋根を活用。補助金を活用して屋根いっぱいに太陽光パネルを設置し、その施設で使い切れない「余剰電力」を独自技術で集約。一般の送配電網(グリッド)を通じて、堺市役所本庁舎へと供給する。

秋田智一代表取締役社長

アイ・グリッドの秋田智一代表取締役社長は、「脱炭素なら何でもいいという時代の終焉。その地域の方たちにとってのメリットがしっかりと見える形で作り、ダメージのインパクトは極力少なくしていきましょうという取り組み。都市部はそもそも太陽光発電メガソーラーに適した土地が大きくないので、自然を傷つけず、地域に恩恵をもたらす分散型再エネの地産地消こそが、これからのGXのあり方だ」と強調する。

■ AIプラットフォーム「R.E.A.L.」が実現する24時間の需給管理

この仕組みを支えるのが、同社のAIプラットフォーム「R.E.A.L. New Energy Platform」だ。Renewable(再生可能エネルギー)、Economical(経済合理性)、Aggregate(分散型電源の集約)、Local(地域循環利用)を掲げ、真の再生可能エネルギーを経済的な価格で供給すし、分散集約と地域循環で環境と暮らしを守る。

AIプラットフォーム「R.E.A.L. New Energy Platform」

余剰電力の供給は、非常に緻密な運用が求められる。同社の岩崎哲執行役員(DX推進部長)によれば、堺市は地域脱炭素を推進する上で、エネルギーのコストの上昇や再エネプラン導入が難しいなどに加え、メガソーラーなどの適地が不足しているという課題を抱えていた。 「屋根が狭い、防水工事が必要でコストがかかるなど、公共施設の構造的な問題でコストの効率として進みづらい。ここの視点を変えて、広い民間施設など“コストを抑えて太陽光を設置できる施設”と連携し、官民連携で公共施設も含め地域全体の脱炭素GXを進めていこうというのが、この堺モデルの一番のポイントです」(岩﨑氏)

岩崎哲執行役員

「R.E.A.L. New Energy Platform」は、AIが施設ごとの発電量と需要量をリアルタイムで予測。例えば、取材時に紹介された堺市の「ホームセンタームサシ美原店」では、晴天時の昼間に発生する発電量のうち、自施設で使い切れない約40%を余剰電力として予測し、市庁舎へ融通している。

「24時間365日にわたり、複雑な発電計画の作成と需給管理への対応が必要。これをAIで自動化・効率化することで、小規模な分散型電源を地域で循環させることが可能になった」と岩崎氏は語る。

■ 参画企業は11社15施設へ拡大、CO2削減量は年間2,600t

現在このプロジェクトには、サカイ引越センターやホームセンタームサシ、地元の製造業など、11社15施設が参画を決定している(2026年1月時点)。

全体の導入容量(DC)は4,900kW、年間で約320万kWhの余剰電力が市庁舎へ供給される見込みだ。これにより、民間事業者の自家消費分と合わせ、年間で約2,600tのCO2削減に貢献する。 堺市の永藤英機市長は「都市部における地産地消型の新しい再エネ調達モデル。全国の同様の課題に直面する自治体にとってのロールモデルとなることを期待している」と、本事業を高く評価するコメントを寄せた。

堺市での事例を今後は全国に

アイ・グリッドの解析によれば、堺市内の民間施設の屋根には、まだ約100MW程度の潜在的なポテンシャルがあるという。

秋田社長は、この堺市での成功事例を「小さなGXの成功例」として全国に波及させたい考えだ。「外へ逃げていた価値を地域内で循環させる。電力代の安定化だけでなく、災害に強いレジリエンス(回復力)の高い街づくりに貢献していきたい」と語る。

自治体と地域企業、そして最先端のAI技術が融合した「堺モデル」。都市型脱炭素の決定版として、今後他の自治体へも大きな影響を与えそうだ。

(取材・撮影/コティマム)