日本がいま直面している人口減少や地域経済の衰退。その解決の鍵として注目されているのが、政府も推進する「地方創生2.0」です。 若者、特に女性に選ばれる地方の実現が急務とされる中、その最前線で「稼ぐ力」と「暮らしの質」を同時に高めているのが、地域に根ざした女性起業家たちだ。
彼女たちの視点は、常に「日常の違和感」や「見過ごされてきた資源」に向けられている。 自身の生活者としての感覚、そして母親や移住者としての経験をビジネスに昇華させることで、これまでの男性中心の経済圏では見落とされていた巨大な市場を掘り起こしているのだ。
そんな女性起業家たちに焦点を当てた事業が、パソナグループが経済産業省関東経済産業局から受託・運営する「令和7年度ユニコーン創出支援事業(女性アントレプレナーのための地域密着型支援事業)」。その一環として、2026年2月2日(月)にマッチングイベント『ビジネスプラン発表会 RED TOKYO』をTokyo Innovation Baseおよびオンラインで開催。
女性起業家たちがどのように地域の課題を「可能性」へと変え、更には日本全体の活性化へと繋げていくのかを3つの革新的なビジネスモデルを通して紐解く。


長野県岡谷市出身の笠原純奈氏は、地域の基幹産業であるリンゴ栽培の途中で間引きされる「摘果(てきか)リンゴ」に着目。おいしいリンゴを育てるために破棄される摘果リンゴは年間、なんと100万トンである。
「天候に左右されてしまう農業に対し、何か別の収入源を創出できないか?」。そんな想いから誕生したのが、クラフトジン「tekaro(テカロ)」である。 摘果リンゴ特有の渋みや酸味をお酒の「キレ」や「未熟な香り」という価値に変換したこの事業は、単なる商品開発にとどまらない。 廃棄コストを収益に変え、農家の所得を安定させ、さらには長野に蒸留所を併設した宿泊施設を作ることで「モノからコト」への地域体験価値を創出しようとしているのだ。

一方で、地方における「働く場の欠如」という構造的な課題に切り込んでいるのが、飯綱町へ移住した元キャリアコンサルタントの大平 香織氏である。キャリアコンサルタントのプロである彼女ですら、移住先で自分を活かせる仕事を見つけることができなかったという実体験が起業理由だ。
「地域課題を可能性に変えたい。働き方がないんだったら自分で創る」と立ち上げたキャリアプログラム「Bloome(ブルーミィ)」は、個人の「好き」と「地域に良いこと」を掛け合わせた「小商い(こあきない)」を創出する場に。3年間で30名もの卒業生を輩出し、特産品の開発や空き店舗の活用が次々と生まれているのだ。
更には、不登校や病気、子育てなどで既存の労働市場からこぼれ落ちてしまった女性たちが、ここで自分らしさを開花させている点にも注目だ。「大人が働くことを楽しむ姿を子供に見せる」という彼女の哲学は、次世代がその土地に住み続けるための土壌を創っているとも言えるのだ。

宇都宮市で活動する上野恵美子氏のプレゼンは、全ての母親の心に寄り添ったものだ。 自身の出産時、移動手段がないために「産む日を決めざるを得なかった」という切実な経験を「命のホットライン」という社会インフラへと変えた。
「1社だけで抱え込まず、地域全体で支え合いましょう」と、競合するタクシー会社を説得し、ローテーションで24時間365日プロが送迎する「陣痛専用ダイヤル」を構築したのだ。
地方のドライバー不足という現実を、企業の「共創」によって乗り越えたこの仕組みは、すでに3,000名以上の会員に利用されている。 今後はこの会員基盤を、家族の人生に寄り添うプラットフォームへと進化させようとしている。ビジネスを通じて「いつでもプロが助けてくれる」という安心感を地域に根付かせ、誰もが安心して住み続けられるコミュニティを維持、支えているのだ。
笠原氏が廃棄されるリンゴの価値を変えたように、大平氏が個人の想いを仕事に変えたように、そして上野氏が競争を共創に変えたように、女性起業家から多様な価値観が地域に流れ込み、停滞していた地域社会に新しい「循環」が生まれている。そしてこれは地方にとどまらず、日本全体の課題解決へとつながっていくはずである。
取材・文/高田あさこ