
「地域の課題を解決したい」「社会を良くしたい」という、情熱的で純粋な志。しかし、多くの社会起業家が理想半ばで疲弊していく現実がある。
その志の火を絶やさないためには、持続的な財源と、それを支える仲間が欠かせない。それを可能とするのが中小企業経営者が持つ「会食数回分」の応援だった。
日本の全企業の99.7%を占める中小企業。その経済的存在感は地方にいくほど高くなり、地域の産業や雇用を支える土台となっている。「OSUSO(オスソ)」はそうした企業を率いる経営者たちを、地域の社会起業家の“応援者”に変えていく、新しいプラットフォームを立ち上げた。
OSUSOを立ち上げた新田拓真さんに社会起業家の活動を加速させる、“再現性の高いパッケージ”の正体を伺った。
―OSUSOの取り組みは社会課題を解決に挑む人たちを支える、これまでにない仕組みだと伺っています。なぜこの事業を立ち上げようと思われたのでしょうか?
新田 僕自身、学生時代からプレイヤーとしてさまざまな社会課題に取り組んできました。その中で痛感したのが、どれだけ志があっても「財源」と「仲間」がなければ続けていけない、という現実です。多くの社会起業家・団体の課題は、突き詰めればこの二つに集約されます。特に継続的な資金調達をいかに実現するかは、非常に切実な問題でした。
―金融機関や投資家からは、“儲からない”と判断されがちな領域でもありますよね。
新田 上場や売却といった資本主義的な出口を持つビジネスであれば、ファンドやベンチャーキャピタルなどから多額の資金が流れます。しかし社会起業家の多くは、必ずしもそこを目指しているわけではありません。そうなると資金調達の手段はどうしても限られてしまう。エンジェル投資家や財団、あるいは寄付やクラウドファンディングなどしかありません。

―クラウドファウンディングは誰でも挑戦しやすい反面、立ち上げ時の勢いは得られてもその後の継続が難しいという声をよく聞きます。
新田 まさにそこです。社会課題の解決はすぐに結果が出るものではないですし、成功モデルもありません。複雑で、時間がかかりますよね。活動を支えるためには、大きな花火を一発上げるのではなく、現場に持続的に薪をくべ続けられる仕組みが必要だと考えました。
地域課題も同じだと思います。複雑で、時間がかかる。だからこそ再現性の高い、続けられるパッケージをつくることが先決なんです。
―OSUSOでは、その持続可能な資金調達をどのような仕組みでサポートしているのでしょうか。
新田 僕たちが着目したのは、中小企業の経営者です。社会貢献活動への出資というと大口の投資家が思い浮かぶと思いますが、実は日本の企業の99%は中小企業。この層にこそ、大きな可能性があると感じました。
―中小企業の経営者層の社会貢献や課題解決の意識が高まっているということですか?
新田 いえ、まだメインストリームとは言えません。ただ、これを文化として定着させていくのもOSUSOの使命だと思っています。
OSUSOの仕組みのポイントは、月額3万円、6万円、9万円という応援投資金額のプラン設定にあります。この金額、実は経営者たちの会食数回分程度の金額と同等のレンジなんです。
―中小企業の経営者であれば、心理的ハードルが低い金額感ですね。 新田 「応援したい」「共感できる」という確かな動機があれば、即決できる金額ですよね。一見、少額に感じるかもしれませんが、毎月6万円の応援者を15人集めらたら、年間で1000万円超の安定した財源になります。あとは、僕たちが起業家と共に「共感を得られる事業モデル」と「納得感のあるリターン」を設計していきます。

―経営者たちからは「応援投資」という“おすそわけ”、社会起業家からは「応援還元」という“おすそわけ”。OSUSOの名前の由来にも通じますね。
新田 実はこのモデル、まずはOSUSOの立ち上げで検証したんです。中小企業の経営者から共感を集め、適切なリターンを設計することで財源が確保できるか試したところ、想像以上の手応えを得られました。
地道な積み上げ型のモデルですし、一人ひとりとの関係性を丁寧に築いていく必要はあります。でもこの関係性こそが、起業家にとって大きな資産にもなります。自ら実践したことで、このモデルはソーシャルビジネスにおける新しいファイナンスになり得ると確信しました。
―投資家にとって、社会起業家の「価値」はどこにあるとお考えですか?
新田 彼らはすでに多くの資本を持っています。たとえば何年もかけて築いた地域や自治体との信頼関係、長年積み上げてきた専門知識、一緒に活動してきた仲間とのネットワーク。それに社会を良くしたいという強い物語性や文化、理念……。貨幣資本のように顕在化しにくいものの、これだけの豊かな資産を持っているのです。

僕たちはそれを「5つの潜在資本」と呼び、貨幣資本も含めた「6つの資本」を適切に組み合わせた事業モデルを提案しています。単なる寄付ではなく、共感に基づいて応援投資し、独自の価値が返ってくるという循環を設計する。そうすることで一過性ではない継続的な応援を可能にしました。
―お金が目に見えない価値に形を変えて戻ってくるわけですね。
新田 具体的なリターンも組み合わせています。たとえば農家支援団体ならお米、CAのセカンドキャリア支援の団体ならフライトに関する特別な優待などですね。ただそれ以上に活動の広がりを共有し、応援していること自体に価値を感じてもらう。それが応援を続けたくなる関係に変える鍵だと思っています。
―先ほどから「出資」ではなく「応援」という言葉を使われているのが印象的です。
新田 サービス利用者でも出資者でもなく、応援者という仲間になってもらうこと。それによって持続可能な「財源」と、応援してくれる「人」を同時に手に入れられるのが、このモデルの最大の特徴です。
30人の応援者がいるということは、30人の中小企業の経営者とのコミュニティを持っているということでもあるんです。これは、社会起業家にとってとても大きな力になります。

―応援を続けてもらうために、具体的にはどんな工夫をしているのでしょうか。
新田 応援は一度共感してもらって終わりではありません。熱量は放っておけば冷めてしまうので、LINEグループをつくり定期的に活動報告を共有するようにしています。起業家が活動の進捗や想いなどを積極的に共有しているような団体は、コミュニティもやはり活性化していますね。
結局、応援も共感も「人」に向いているものなんです。この人を応援したいと思ってもらえるかどうかが、大切。だから関係性を途切れさせないことが大事だと感じています。
―財源と人の心配がなくなるだけでなく、応援してくれる人がいるという心強さまでありますね。
新田 そうだと思います。財源と人の不安が解消されれば、社会起業家は本来のミッションに専念でき、スピード感を持って活動を推し進められるようになります。社会問題の多くはスピード感を持ってやらないと間に合わないものばかりです。
OSUSOは社会起業家が孤独に戦わなくていい環境をつくり、継続的に活動していくための支えになればと願っています。
次回後編では、具体的な支援内容と事例を通して、OSUSOが描く「社会起業家が国を動かす未来」についてさらに掘り下げていく。
写真/五十嵐美弥
取材・文/福田真木子