公式SNS
facebook
X
ロコ・ラボニュース ロコ・ラボニュース

モデルから農業へ。ローラが語る新潟の魅力と、日本文化から見えてきた自分を愛する生き方とは【TEDxMarunouchiイベントレポ&独占インタビュー】

2026/05/28

TEDxMarunouchiにローラが登壇、華やかなキャリアの先にみつけた大切なものとは

多様な分野のスピーカーが登場し、「Ideas Worth Spreading(広める価値のあるアイデア)」を共有するイベントTEDxMarunouchiに、ローラさんが登壇。満員の会場は、ローラさんが登場すると大きな拍手に包まれました。

冒頭の言い間違えから、会場は一気に和やかな雰囲気に

日本人の母とバングラデシュ人の父の間に双子として生を受けたローラさん。冒頭「日本人のお父さん、あ、間違えちゃった」と笑顔を覗かせると、期待と緊張感に包まれた会場が一気に和やかなムードに。

1歳で両親が離婚するとバングラデシュの自然豊かな村で自然の恵みを感じながら育ち、その後6歳で来日。当初は日本語が話せなかったことで苦労をしながらも、心で通じ合えることを学んだそうです。

「私はベンガル語しか話せないから、日本語で書かれた教科書を読むことも、誰かと話すこともできませんでした。みんなと会話するときは、お猿さんのように目の表情や手の表現などジェスチャーで伝えていたら、みんな優しくしてくれて、気づいたらお友達がたくさんできました。今思うと人は言葉が話せなくても、心と心で通じ合うことができるんだということを学んだのかもしれません」(ローラさん)

華やかな活動の中で、拒食症やうつ病、パニック障害を経験

16歳でスカウトされてモデルの仕事を始め、その後テレビでも活動するようになったローラさん。しかし、楽しいと感じている気持ちとはうらはらに、忙しい毎日の中で心と体のバランスを崩し、拒食症やうつ病、パニック障害を経験。環境を変えようとアメリカへ渡り、運動や生活を見直す中で「ありのままの自分」を受け入れられるようになったと語ります。

「ロサンゼルスに移り住んだある日、『公園でトレーナーさんが運動を教えてくれるから一緒に行かない?』と友達に誘われ、行ってみることにしました。その時の私はあまりに弱々しく、トレーナーもローラは二度と来ないだろうと思っていたほど。でも、諦めずに何度も通って奮闘していたら、気持ちが少しずつポジティブになるのを感じました。日本にいたころは、髪を明るく染めて、カラーコンタクトをして、日焼けを気にして、自分ではない誰かになろうとしていました。世界中の国の人たちが集まるアメリカでは、肌の色や髪色、体型、価値観も様々。そんな人々がそれぞれの個性を生かしながら自信を持って街を歩いている姿に感銘を受け、自然体であることを楽しむようになったら、自分が本来持っているありのままの姿がどんどん好きになっていったんです」(ローラさん)

物や人、自分自身を大切にする心を茶道を通して学んだ

自分の見た目や心をありのまま受け入れられるようになると、自分のルーツである日本とバングラデシュの文化に興味を持つように。毎年バングラデシュで文化を学びながら、日本では茶道を始めたそう。

「茶道では、すべての動きが作法によって決まっています。作法を通して“今”だけに意識を向けることで、余計なことを考えず目の前にお客様に精一杯のおもてなしをすることに集中することができます。茶道を始めてから歩き方や、扉の開け閉め、お皿洗いなど日常の動作ひとつひとつにも意識が向くようになりました。物に対して優しく丁寧に接していると、自分の心にも優しく丁寧にしている感じがします。私にとって茶道とは、日本を越えて、世界中の人たちの心を優しく包み込み、人間として美しく自然と共に丁寧に生きる“型”というものを見せてくれるような心の学校だと感じています」(ローラさん)

畳一畳を6歩で歩く茶道の作法から、普段の歩き方に意識がいくようになると、歩くことも楽しくなって一本下駄で歩く日も増えたと語るローラさん。会場では「このまま新幹線も畑も行っちゃうんです」と一本下駄で歩く姿を披露してくれました。大分に行った時に見つけて購入したという一本下駄は、靴底の中央に「歯」が1本だけついた伝統的な下駄の一種で、体幹トレーニングや姿勢矯正のためのアイテムとして現在でも愛されています。

日本の伝統文化を支えながら新潟の山奥で農業をすることに夢中に

自分の文化を好きになって受け入れていくと、今度は自分が普段食べているものも気になるように。食について学ぶ中で、日本の食料自給率の低さや農家の高齢化問題を知り「自分でも食を支えたい」という強い思いから、アメリカで取得したグリーンカードを手放し、母の故郷である新潟の山奥へ移住することを決めたと語ります。

「今、日本の食料自給率は約38%と言われています。 100年前までは約 90%以上あると言われていました。この 100年で大きく下がっています。私たちの食の60%以上は、海外からの輸入で支えられているのです。日本ではたった3%の農家さんたちが私たちの食の入り口を支えてくれています。一人の農家さんで 100人分以上の食をまかなっているケースも少なくありません。若い人たちはどんどん都市に行き、農家さんたちはどんどん高齢化して、跡を継ぐ人もどんどん少なくなり、今実はとても深刻な状態なのです。もし明日日本全国で大きな災害や大きなが停電が起きてしまったら、スーパーからはたった数日で食べ物がなくなってしまうとも言われています」(ローラさん)

日本の食を未来につなぎたいという思いから現地では農家さんに教わりながら雑穀栽培を学び、その後、使われなくなった田んぼを借りてお米作りも始めたローラさん。朝早くから畑や田んぼで作業し、自然のリズムに合わせて暮らす中で、心が大きく癒されていくのを感じたそう。

「土の中に入った感覚は、ほんのり冷たくてぷにぷにで気持ちいい。なんだか土の布団に包まれてるような感覚でした。夏は朝 4時に起きて、そのまま畑や田んぼで 4〜5時間作業したら、日中はとても暑くなるから、そのまま冷たい麦茶を持って、海や川にジャンプ! そしてリラックス…、というような日々が続きました」(ローラさん)

自分で育てたお米があることで、大切な人を支えられる安心感も知りました。一方で、異常気象による不作も経験し、食が決して当たり前ではないことも実感したと語ってくれました。

「私たちがどんなものを選び、どんなものを食べ、そしてどんな生き方をするかが今後の未来に大きく影響を与えるのかなと思います。もし今心が落ち込んでいたり、生きる希望を探している人がいたら、ぜひ自然の中に遊びに来てください。土の上で裸足になって、自然からの愛をいっぱい感じよう!」(ローラさん)

ローラが語る、新潟の魅力

TEDxMarunouchiの登壇後、ローラさんにロコ・ラボ独占インタビューに応じていただきました! 農業への思いや新潟での暮らし、魅力などたっぷりご紹介します。

──今日の衣装は、どちらのものですか?

「古着を仕立て屋さんと相談して作った衣装です。スカートにして2部式にしたいなと思ってで、上は羽織なのですが、そのまま着るのもいいけど、ウエストをキュッとさせたいなと思って、その帯をちょっと細めの帯にしました。新しい形の着物なので、襟を折ってみたり試行錯誤しながら着ています。古くなって余った着物たちも多いので、そういったものを使いながら何か新しい形にできないかとずっと考えていて、新潟で着付けを習っている先生とに相談をしたら、じゃあ作りましょうって一緒にすぐにやってくれて。着付けを習いながらも、普段さらっと着れるような着物も一緒に考えて作っています」

──実際に農業をしてみて、楽しかったことは?

「全てが新鮮で、楽しくて、田んぼや畑にいると時間感覚がなくなってしまうから、気付けば何時間も経っています。勉強などと違って土を触ったりして遊んでいるような感覚で、本当にこれでいいのかな? と思うほどだけれど、でもそうすることで飢えた雑穀や稲などが育って、食べることができて、私たちが生きられる。そう思うと楽しい以上の充実感や生きがいを感じます。私にとってそれが新しい感覚で、今夢中になっています」

──今まで様々な国や地域を見てきたローラさんが今感じている、新潟の魅力は?

「新潟にいると、私は今天国にいるんだなって感じます。人間は食べて、住むところがあれば、生きていけるっていうこの感覚。このシンプルなことにずっと私気づけてなかったんだなって新潟で農業をするようになって思いました。今自分で食料を作っているから、食べ物がなくなることへの危機感や心配がない。自給自足することをベースに人生を今デザインしている感覚がしています。新潟という場所も、自然豊かで、空気がきれいで、その場にいるだけで癒されます

運転免許を1年前に取ったんですけど、ドライブも楽しくて……! 1時間かけて好きなコーヒー屋さんに行くことがあるのですが、道中の景色も美しいうえに春夏夏秋冬変わっていく自然を感じるのも楽しいから、その1時間のドライブを楽しみにしているほどなんです。このタイミングでこの花が咲くんだとか、つくしが今伸びてるとか、新潟でより自然のリズムを体感するようになってたことで、植物や季節に対して感謝の気持ちが高まりました」

──今から新潟に訪れる人におすすめの場所や、グルメは?

「おすすめの場所は、村上市です。古き美しき日本を感じるような、風情がある街なのですが、あるご夫婦さんが頑張って街起こしをしたという経緯も素敵ですよね。古い街を活かしたり、伝統文化である『塩引き鮭』を作ったりしています。お団子屋さんがあったり、お茶屋さんがあったり、街歩きもおすすめです

私のおすすめのお茶屋さんは、茶館きっかわ 嘉門亭(かもんてい)。ボロボロだった家を改装して作ったお茶屋さんなのですが、日本庭園を眺めながら1時間ぐらいかけてお茶を飲むコースや、これからのシーズンはかき氷など美味しくて景色も良いのでぜひ行ってほしいスポットです

新潟県の代表的な庭園が集中している村上~関川~新発田~阿賀野~五泉~新潟を結ぶ全長約150km庭園街道のアンバサダーを務めているのですが、ドライブをしながら庭園を巡るだけでも楽しいので、かなり充実した旅になると思います」

──新潟の他にも現在関心を寄せている地域はありますか?

「ある!(即答) もう、いろいろあります。京都も好きだし、福岡も好きだし。この前は長野も行きました。あとは最近葉山にも行ってきたし、次は鹿児島も行くし……。日本全国、それぞれの場所の魅力があるから、新潟ベースにしつつ全国の魅力や楽しさをこれからも発信していきたいなと思っています」

──次に行きたいなと思ってるのはどこですか ?

「今月はお茶畑に行く予定なのです。普段茶道でお茶を立てたりしてるので、自分が大好きなことに関係する場所に行ったり、学ぶことを想像するだけでワクワクしています」

──茶道をきっかけに、農業にも関心を持たれたと伺いましたが、茶道以外にも感銘を受けたものはありますか?

「茶道以外には華道も習っていて、とても奥深いお花の世界の美しさも感じています。先日は漆職人さんのところに行って漆について学ぶ中で漆の魅力を感じて感動しました。あと、今関心があるのは日本家屋!ネジや釘を使わずに造られれている建物を見てすごいなと感じていますし、さらにその家を一度解体して移築できるところにも魅力を感じているので、この素晴らしさがこれからもっと世界に広がっていくのではないかと感じていますし、同時に広げるお手伝いをしたいなと思っています」

TEDxMarunouchiで自分を愛すること、食の問題、日本文化など、様々な問題について自身の体験を通して赤裸々に語ってくれたローラさん。私たちもいつもの動作をちょっと丁寧にしてみたり、毎日の食事に意識を向けてみたり、ローラさんおすすめの村上を訪れてみたり…etc. ちょっとしたことから、自分も日本の未来もより良くしていけたら素敵ですね。

ローラ
1990年、日本生まれ。日本人の母とバングラデシュ人の父を持つ。16歳でモデルとしてデビューし、日本を拠点にファッション誌やテレビ、映画など幅広い分野で活躍。その後、約10年間ロサンゼルスで暮らしたのち、日本に拠点を移す。現在は母のルーツがある新潟にも通いながら農業に取り組み、自然と共に生きる暮らしや食、文化の魅力を国内外に発信している。