
各地域には名産や有名な食材がある。実際に現地に行くことができなくても、その地域の特徴が全面に出た商品があれば、地域の魅力を全国の人々に届けるキッカケになるだろう。
カレーや香辛料などを製造・販売するエスビー食品株式会社は三重県と連携し、レトルトパスタソースの人気シリーズ『まぜるだけのスパゲッティソース ご当地の味』の最新作として、「三重県伊勢志摩伊勢海老バター仕立て」を8月10日より全国で発売する。

発売に先駆け、都内の三重県アンテナショップ・三重テラスで新製品発表会が開催され、三重県の一見勝之知事とエスビー食品のマーケティング企画室長・中島康介氏らが開発に込めた熱い想いを語った。

エスビー食品の中島氏によると、共働き世帯の増加や時短ニーズの高まりにより、パスタソース市場では「茹でた麺にまぜるだけ」のタイプが急成長しているという。同社の「ご当地の味」シリーズは前年比213%という驚異的な伸びを記録している。
そもそもなぜ「ご当地の味」を企画したのか。中島氏は、「スーパーのパスタソースの売り場をご覧いただくとお分かりになる通り、カルボナーラやボロネーゼ、たらこや明太子、ツナ、この辺りは大体どこのスーパーさんも置いていただいています」と、いわゆる“定番の味”が並んでいると説明。「私たちは、選ぶ楽しみ、食べる楽しみを提供したいと常々思っているので、限られた市場で同じような味種を販売していても、お客さまも楽しくない。『地域色を出した、そして魅力的な食材にフォーカスをした特別な商品を出せないだろうか』と考えたのがきっかけです」と、理由を明かした。

そうした中で、消費者へのアンケートを実施。「パスタで食べたい魅力的なご当地食材」として支持が高かったのが、三重県伊勢志摩の「伊勢海老」だった。

今回のコラボレーションは、三重県出身である同社の前社長の「三重県の食材を使いたい」という願いから始まった。一見知事は、三重県が古来より朝廷に海産物を献上してきた「御食国(みけつくに)」であることを説明。「伊勢海老の生産量は今、千葉県に次いで第2位ですが、ブランドとしての『伊勢海老』の名前は全国で愛されている。このソースを通じて、三重の豊かな自然を感じてほしい」と期待を寄せた。
新製品の最大の特徴は、伊勢志摩で水揚げされた伊勢海老を殻・味噌・身まで丸ごと加工した「伊勢海老パウダー」を使用している点だ。

中島氏は開発の裏側について、「このパウダーは他の原料とは比べものにならないほど風味が強い。その魅力を最大限に活かすため、他のエビ原料は一切混ぜず、伊勢海老だけで勝負しました」と明かす。味の構成はトマトベースではなく、伊勢志摩の旅館で提供される「伊勢海老の焼き物」をイメージ。バターのまろやかさに隠し味の赤味噌を加え、濃厚で上品なコクを引き出した。中島氏は「三重県さまには広い心で食材を提供いただき、我々を信じてくださったのかなと思っています」と感謝し、「その期待に答えるべく、最大限取り組んで、(伊勢海老の)ブランドを傷つけることなく、“ウィンウィン”の形が作れないかと模索した結果でございます」と商品にかける熱意を語った。

開発現場では「理想の伊勢海老像」を追求するため、試作回数が50回を超えたという。同社の開発メンバーは、「殻を焼いた香ばしさ、味噌のコク、身の甘みのどこにフォーカスするか非常に悩みました。30回以上の試食を繰り返し、ようやくたどり着いたのがこの『バランスの取れた味』です」と、完成までの苦労を振り返った。

また「お弁当にも活用したい」という主婦層の声に対し、「麺をあらかじめ少量の油(オリーブオイルなど)で和えておけば、お弁当を食べる時にソースを後からかけても、冷めても美味しく召し上がれます」という実用的なアドバイスも送られた。

発表会で試食した一見知事は、「普段の試食は健康のために昼食を半分残すようにしているが、今日はあまりに美味しくて全部食べてしまった」と笑顔を見せ、「地域と食材のバランスが非常に取れたお味。贅沢な味わいを家庭で手軽に楽しんでほしい」と太鼓判を押した。
一見知事は三重県民の特徴について、「実は、あまり表に出ないことを美徳としています」と告白。今回のエスビー食品とのコラボレーションによって、地域創生やPRの面で刺激を受けたという。
「伊勢神宮は、江戸時代に全国から年間約600万人がおいでになっていた。当時、人口が約3000万人の中で、たくさんの方が伊勢神宮にいらっしゃるので、その地域のホスピタリティは発揮します。ただ、こちらから(外に向けて)いろいろな商品を表に打ち出すことはあまりやってきませんでした。今回エスビーさんからお話をいただいて、『これじゃいけない』と思い、最近は観光のポスターも作り、『とってもいい場所がありますよ』『美味しい食材もたくさんありますよ』ともっと出していこうと思いました」

さらに、「三重県には伊勢海老だけでなく、お肉もあります。松阪牛が非常に有名ですが、鶏肉も豚肉も美味しいものがある。海の幸ではアワビ、カキの他に、あおさは生産量日本第一位です。加えて柑橘類も非常に良いものがたくさん獲れ、御浜町(みはまちょう)は『365日みかんがとれる町』で有名です。ユズなどの柑橘も一部取り入れて、赤福さんでお餅を作っていただいたりもしています」とまだまだ広がる三重の魅力をアピール。「そういったものも、これから使っていただけるのではないかと思います。最大限、協力をさせていただきたいです」と意気込んだ。

高級食材の代名詞である伊勢海老を、茹でた麺に「まぜるだけ」で堪能できる本商品。そこには、古くからの「御食国(みけつくに)」としての誇りを全国へ届けたいという三重県の想いと、50回もの試作を重ねたエスビー食品の職人魂が凝縮されている。一見知事が語った「もっと表に出していく」という決意とともに放たれるこの一皿は、単なるパスタソースの枠を超え、三重の豊かな食文化を全国の家庭へと繋ぐ新たな架け橋となりそうだ。
(取材・文/コティマム)