
「あなたの日常にワンダーを!」をキーワードに、地球にも動物にもやさしい放牧酪農の可能性を追求しながら、おいしいスイーツを作り続けるスイーツブランド「WONDER」。大人気の「CHEESE WONDER」が、リニューアルし、東京駅構内に、2026年10月28日には、常設店舗もオープンしました。より多くの人に食べてもらえる機会を作るのには、放牧牛乳の価値を高めたいという思いが込められています。

「WONDER」を展開する「ユートピアアグリカルチャー」は、『おいしいお菓子で世界を切り拓く』をテーマに、和洋菓子ブランドの企画・開発・製造・販売から、お菓子作りに必要な原材料である牛乳や卵の生産までも手掛ける「北海道コンフェクトグループ」のひとつで、6年前からチーズケーキ「CHEESE WONDER」の販売を行っています。『おいしいお菓子をつくるために、どこよりもいい原材料を自らつくる』という考えのもと、北海道で放牧酪農や平飼い養鶏のほか、山地酪農にも取り組んでいます。原材料がおいしければ、よりおいしいお菓子ができることは想像できますが、酪農から行うというのは、異色の取り組みと言えます。
「放牧牛乳の価値を上げたいという思いから、ユートピアアグリカルチャーの取り組みは始まっています。現在、牛乳は、放牧牛も牛舎の中で飼育する舎飼いの牛乳も同じ価格で買い取られ、それらがブレンドされて市場に出ています。それでは、放牧酪農が増えません。そこで、放牧酪農を守り、より価値を上げていくことを目的にしています。」(北海道コンフェクトグループ代表取締役 長沼真太郎さん)

放牧酪農を行うことで、牛たちが自由に歩き回ります。糞尿は大地が回収してくれ、牛が歩くことで、栄養が土に入っていき、メタンやCO2も回収されます。実際に、どれくらいの変化があるのかを北海道大学と共同で、土壌が貯留する炭素量に関する研究にも取り組み、土壌の炭素量をはじめ、植物の多様性、微生物の種類などを継続的に計測し、数値データとともに、環境の変化を毎年追跡しています。
北海道日高町にある自社牧場では、毎年1haあたり11tのCO2を貯留し、常時273t/haのCO2貯留量があることが、実験結果から明らかになったそうです。ちなみに、273tというのは、一般家庭に換算すると100世帯分のCO2排出量と同等だとか。また、牛1頭当たり毎年10tのCO2を排出することから、牧場面積32haでは、35頭分のCO2排出量をオフセットできています。現在、70頭から80頭程度いるため、約半分のCO2が吸収できていることになります。放牧による恩恵は、もちろん牛乳の味わいにも表れます。放牧牛乳は、一般的に販売されているものと比べて黄色みが強く、飲むと自然な甘みとコクが感じられます。この牛乳のおいしさがも、「WONDER」のおいしさの理由のひとつです。草を食べて育つ牛たちの牛乳は、季節によっても味わいが変化するそう。冬に向けて脂肪を蓄えることで、甘みがより増していくといいます。筆者も、試飲させていただきましたが、見た目の黄色みは一目でわかるほど。口に含むと、豊かな甘みとコクが広がる、印象的なおいしさでした。

平飼いの養鶏では、餌に工場で出るクッキーくずも、おやつとして与えているといいます。
「養鶏は、インドネシアに原生種と言われる鶏がいることから、インドネシアの環境に近い形にしています。お菓子づくりで出たクッキーくずや苺のヘタを鶏がたべ、糞は大地の肥料になります。お菓子を食べさせることで、卵にコクもでます。」(長沼さん)
おいしいクッキーのくずを食べているだけに、確かに卵もおいしくなりそうですね。もちろん、その卵もスイーツに使われるという循環が生まれています。
「現在、札幌市盤渓で、フォレストリジェネラティブの取り組みを行っています。山は、動物が入ることで、どう変化するのかを実験しています。どのくらい変化しているのか、数値を検証中です。」(長沼さん)
写真を見ると一目瞭然で、動物が入ることで、うっそうとしていた森が明るくなった印象です。今後の検証結果が楽しみです。

極限までやわらかい生チーズスフレと生チーズムースに、ザクザククッキーのフレッシュさを冷凍で自宅に届けるという、オンライン販売だからこそできるお菓子として誕生した「CHEESE WONDER」ですが、東京駅八重洲中央口内に常設店舗をオープンするタイミングで、「WONDER」へとリニューアルしました。
「驚きのあるブランド。ワンダーブランドということで、『WONDER』にしました。生チーズケーキの「チーズワンダー」のおいしさを常温でも日持ちするようにと、チーズチョコレートと空気の含有量を増やし、ザクザククッキーにもこだわった『ワンダーケーキ』には、一番時間をかけて開発しました。東京駅の店舗限定販売する、『チーズワンダー バスク』は、1日2回時間限定でできたてを販売します。また、国産はちみつのあめをかけて、パリ、サク、カリの食感が楽しめる『ワンダークッキー』と、ラインアップを増やしています。実は、店舗にもおどろきを用意しています。札幌市の盤渓の土を取り寄せて練り込んだ土を店舗のタイルに使用しています。北海道の思いを店舗からも伝えるためです。ほかにもワンダーな仕掛けがあるので、ぜひ店舗も見学してください。」(浅沼さん)

オープンしたばかりの店舗に足を運んできました。北海道の牧場を原点とするブランドの背景を店舗空間に反映した店舗のタイルには、人の手によるものとわかる質感も表現されています。また、「WONDER」らしい遊び心満点で、筆者は思わず、「あっ!」と、声を上げてしまいました。店舗の壁に並んでいる「チーズワンダー」が躍っているではありませんか。大人気で行列になっていたとしても、次は、どれが躍り始めるかなとみていると、まるでアミューズメントパークのようでわくわくしました。

北海道は、酪農から製造、販売まで、ものづくりに必要な環境がそろう土地です。近年は、移住相談も高水準で推移しています。自治体独自の子育て支援や住宅補助に加え、気候の変化なども移住を考えるきっかけになっているようです。
「移住する人が増えたことで、札幌の価値も上がっています。雇用を生みだすことで、北海道の地域活性化に貢献できればと思っていますし、今後は、放牧する山もさらに広げていく予定です。」(長沼さん)
サーキュラーエコノミーを実践することは、環境配慮だけでなく、その土地での雇用を生み、地域活性につながっています。
「今後、放牧酪農をもっと広げ、将来的には、ほかの牧場で生産された放牧牛乳を買い取ることも考えています。」(長沼さん)
一般的な牛乳として販売するのではなく、負荷価値の高いお菓子に使用することで、放牧牛乳の価値を高め、持続可能な循環を生み出します。ブランド立ち上げ時に掲げた「放牧牛乳の価値を上げたい」という思いは、これからも続いていきます。放牧酪農が広がることで、牛乳やお菓子のおいしさがさらに高まり、地域の活性化にもつながっていきます。このような循環が広がることで、環境にもよい影響をもたらしてくれるのではないかと感じました。
WONDER
https://www.utopiaagriculture.com/brands/wonder/