ふらっと旅に出かけたいなと思うことはありませんか?
桜の便りが聞かれるようになるとウズウズし、テレビ番組で地方の郷土料理が紹介されると、思わずメモを取ってしまうことはありませんか。御書印プロジェクトには、日本全国の書店が参加しています。そこで御書印店巡りを旅の目的にするのはいかがでしょうか。一緒に名所を巡り、美味しいものがたべられたら最高ですね。
歌人の石川啄木が、釧路と縁が深かったと知る人は少ないかもしれません。
釧路にある『港文館』は、レンガ造りの趣きのある洋風建築です。この建物は旧釧路新聞社屋の一部を忠実に再現していて、啄木はこの地に滞在中に釧路新聞記者として働いていました。
「初めてこの場所に来たときに、『さいはての駅に降り立ち雪あかりさびしい町にあゆみ入りにき』と詠んでいます。小樽新聞社でトラブルを起こして、単身赴任でこの地に来た啄木の心細い気持ちが感じられますね」と、港文館の運営を行う湯城誠さん。御書印の一筆は、この歌です。1階の書籍コーナーでは啄木や、釧路に関連する本が充実しています。
「急激な寒冷が原因で廃れてしまったようですが、縄文時代が栄えた場所でもあるのですよ」。そのため、縄文関連の専門書も並んでいます。2階には無料の啄木資料館があり、ソファーでくつろぎながら閲覧が可能。1階のカフェで注文すれば、啄木の顔が描かれた啄木ラテを飲むこともできます。
「中学5年生(当時の最終学年)で退学してまったり、大人になっても人と衝突を繰り返したりする啄木は人間臭いなあと思いますね。釧路でも借金を返さなかったり、料亭であそんでたりしてたようです」。そんな啄木ですが、市内には25基の歌碑があります。港文館の前には彫刻家の本郷新(ほんごうしん)による啄木像と歌碑が設置されています。「世界三大夕日の名所『幣舞橋(ぬさまいばし)』は、お勧めですね。夕日をバックに浮かび上がるブロンズ像がきれいですよ」橋のたもとには四季を表す4体の像が立っていて、その内1つは、啄木像と同じ本郷の作品です。
遠野といえば、柳田國男が不思議な伝説を書き記した『遠野物語』を思い浮かべる人も多いと思います。柳田が遠野滞在中に、原稿用紙を買いに寄ったという『内田書店』は、明治26(1895)年創業。5代目になる店主・内田正彦さんは、「東京で会社員をしていましたが、父の死去で店を継ぐために、3年前に遠野に戻ってきました。その後、コロナ禍の影響を受けましたが、途絶えていた旅行客もようやく戻ってきた気がします」。
内田書店の御書印スタートは昨年の8月8日。この日は、奇しくも柳田國男の命日にあたります。こだわりの御書印は、『水木しげるの遠野物語』を図案化したもので、遠方からの御書印巡りの人たちに好評なのだそうです。店内は子ども向けの絵本や児童書が充実していて、親子で訪れる人も多いそうです。遠野に関連する本も多くあります。「2階をリフォームして、フリースペースを作りました。地元の資材を使ったワークショップなどを開催しています。遠野物語のミニ講座や、語り部講座なども考えています」。
語り部とは、遠野に伝わる民間伝承を伝える人たちを指します。代々受け継がれてきた方言の語り部は、味わい深いものです。趣のある茅葺き屋根の『伝承園』では、昔の暮らしぶりがわかる展示等が。
「伝承園のすぐ近くには、カッパが住んでいたとされるカッパ淵もありますよ。運が良ければ、遠野市公認の『カッパおじさん』と会えます。バケツ型の容器で焼くジンギスカンと、遠野産ホップのビールが、地元では人気ですね」。