本や書店を愛する人たちから支持を集めている御書印巡り。2020年3月にスタートし、3年目を迎えました。日本全国の参加書店に足を運ぶと、専用の御書印帖に印が押され、さらに一筆を記してもらえる画期的な試みです。
2022年7月には「御書印新聞」を発刊。御書印プロジェクトの立ち上げに関わったメンバーに、これまでの経過を振り返ってもらいました。
発起人である小学館パブリッシング・サービスの小川宗也さんは「荻窪の書店に立ち寄った帰り道、『御書印』のフレーズが浮かんできたんです」。元々、四国八十八ヶ所巡りをした経験から、書店と来店者を結びつける企画ができないかと考えていたそうです。
「四国遍路で納経帖を持参して巡るのと同じように、書店を回るイメージが自分の中で合わさったんです」。神社やお寺を回る御朱印も静かなブームが続いていることから、御書印の言葉が誕生したようです。
すぐに書店勤務経験のある同僚や老舗書店の店長に話すと「面白そう」「参加したい」と好感触を得ます。その後、和樂Web高木史郎編集長に相談すると「今すぐやった方がいい」と強力なプッシュ。
「本当は、1年後ぐらいを見据えていたのですが、お蔭でプロジェクトが一気に加速しました(笑)。2019年秋ぐらいに話をして、翌年の3月にはスタートしましたからね」。
書店で押すはんこの作成に携わった小学館パブリッシング・サービスの井手萌子さんは「お店のロゴや外観、所在地の名所や、特産品など、はんこのデザインはさまざまですね」。書店から文字でイメージが送られてきて、一緒に一から考えたこともあったそうです。井手さんは「最初は、まさか御書印がこんなに大きくなるとは思いませんでした」。スタート時の参加書店は46店でしたが、2022年7月上旬には、364店。御書印の取り組みは、新聞やテレビなどのメディアにも取り上げられて、大きな注目を集めました。御書印プロジェクト事務局メンバーと、参加書店、御書印を楽しんでいる人たちが、ZOOMを使って自由にトークを繰り広げる『御書印ナイト』の開催も、好評でした。
御書印プロジェクト事務局の片野未咲希さんは「スタートしてすぐにコロナ禍で、どうやって進めようかと試行錯誤でした」。50店の異なる書店の御書印を集めると、巡了者として事務局から特製図書カードが贈られます。この時に巡了者に書いてもらうアンケートの言葉に励まされたと片野さんは話します。アンケートのコメントには「個々の専門の本屋さんや思いもしない場所にある本屋さん。この企画がなかったら出会うことがありませんでした」。「他店の御書印を一緒に見ながら、書店の方との会話が楽しかった」など、御書印を楽しんでいる様子がうかがえます。御書印帖は、参加している書店で配布される無料のものとは別に、有料の特装版(写真)があります。創業70年の老舗『渡邉製本』が手がけたこだわりの仕上がりで、灰緑色のクロス貼りの表紙を開くと、にぶ桃色の見返しが表われます。特装版は、取り扱い店でのみ購入できます。
御書印プロジェクトには、これまでに8つの島の8つの書店が参加しています。「御書印を旅の目的に取り入れてもらいたいですね。いずれは海外の書店にも広げたいです。まずは、中国、韓国から。そして、イギリスの書店でシェイクスピアのセリフの一節を書いてもらうとか想像すると、楽しいですね」と小川さんの夢は広がります。
「御書印新聞」とは、御書印プロジェクトに関する話題を、御書印に関心を持つすべての方と共有するツールです。参加書店のディープな情報や御書印の裏話、実際に巡っている方の旅の思い出、事務局の裏側などさまざまな視点から話題を提供して、新たな発見や楽しみを見つけていただくことを目標としています。3年目となる2022年度は創刊号の7月号・11月号・3月号と3回にわたって発刊予定です。創刊号は、御書印のはじまりを振り返るとともに、御書印帖の巻頭ページの文章を考案した、和樂Web編集長・高木史郎の旅をテーマにしたおすすめ本をご紹介。そのほか、御書印帖のひみつ、数字でわかる御書印プロジェクト、オリジナルアイテムの紹介、巡了者情報、書店にまつわる川柳の募集、そして注目の連載「スーツ小川の屋上はたけ仕事日記」が創刊とともに始まります。自宅で常時15~30種類の野菜を栽培する一面を合わせもつ、御書印プロジェクトの発案者、小川の自由気ままなコラムです。御書印新聞が書店の旅を面白くするコツやヒントになれば幸いです。