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アウトドアフィールドを巡る移動本屋さん登場!CAMP with BOOKSプロジェクトがスタートしたぞ

2024/06/21
©『CAMP with BOOKS』プロジェクト

日々の喧騒から離れ、自然のなかでゆったりとした時を過ごす。小鳥のさえずりや風の音、木々のゆらぎを感じつつ、夜になれば焚き火を熾して暖を取り、テントの中で体を休める。

そこに「お気に入りの本」「読みたい本」があったら。

小学館のネイチャー&アウトドアメディア『ビーパル(BE-PAL)』と、出版取次会社の『トーハン』、薪ストーブから焚き火まで手掛ける『ファイヤーサイド(FIRESIDE)』が一体となって、『CAMP with BOOKS(キャンプ ウィズ ブックス)』プロジェクトをスタートさせた。

『CAMP with BOOKS』プロジェクトとは

キャンプをはじめとしたアウトドアシーンでは、静かに過ごす時間が豊富にある。焚き火に薪をくべて火の前に座ったり、ハンモックに揺られたり。暑い日は川に足だけ入れて涼を取ることも。自然を感じながらほっとひと息つく。そんなチルタイムの相棒に本や雑誌があれば、もう最高だ。

『CAMP with BOOKS』は、読書とキャンプ&焚き火のアウトドアライフを提案するプロジェクトで、自然のなかで「本」と一緒に過ごすスタイルを提案する。

そのひとつが、本の移動販売車『ホンジュールカー(Honjour! Car)』による、アウトドアフィールドへの出店。ホンジュールカーは、その場所、そこに集まる人、そこでのシーンに応じた本を選書して届けてくれる、言わば“動く”本屋さん。ホンジュールカーはトーハンの社内ラボ「Book Boost Lab.」からうまれた。

トラックをベースに特別につくられたホンジュールカー。側面がタープのように跳ね上がり、まるで街の本屋さんのように書籍、雑誌が並ぶ。ホンジュールカーが持ってくる本は、その日、その場所のために選ばれたもの。一期一会の出会いだ。

そこに火を専門とするファイヤーサイドの演出が加わり、「焚き火」と「読書」が融合するアウトドアならではのロケーションができあがる。本の向こうに炎がゆらめき、パチパチと心地よい焚き火の音をBGMにして読書に没頭する、まさに特別な空間。

「焚き火をしながら読んだ本、楽しかったな」。キャンプで手にした本が家族や友人間での会話の種火となり、思い出が共有できる。その経験を可能にするのが、『CAMP with BOOKS』だ。

炎のゆらめき、ぬくもりは、物語に没頭できる最高の場所となる。

自然のなかで本を読む。最高のチル時間を楽しもう

焚き火を囲み、思い思いに語るプロジェクトメンバーたち。

かつて冒険に挑んだアウトドアの先人たちは、紀行文やエッセイを通じて旅の記録を後世に残してくれた。

ビーパルで長らく連載をしていた故・野田知佑さんは、旅に出る度に「そこで読む本」を持参していったという。旅先で出会った人に「本を交換してくれ」というエピソードも。それだけアウトドアフィールドでは本を読む時間があり、また、本をより身近に感じることができる。

この日、選ばれた本のなかには野田知佑さん著作の本やメモリアルブックも含まれていた。

『CAMP with BOOKS』プロジェクトに参加しているビーパル、トーハン、ファイヤーサイドは、「本」と「アウトドア」でつながっている。

プロジェクトメンバーのひとり、ビーパル編集長の沢木は学生のころ、野田知佑さん、椎名誠さんに憧れてアウトドアの世界に飛び込んだ。当時、山や川、沢での部活合宿で、どの本を持っていこうか悩んだという。

仲間と過ごす狭いテントのなかでひたすら本を読む。悪天候で活動できないとき、夜の就寝前に寝袋に入ってなど。アウトドアフィールドで読んだ本は、今も沢木の思い出に刻まれている。

ビーパル編集長、沢木拓也。大学在学中はワンダーフォーゲル部に所属していたこともあり、小学館入社当初からビーパルを希望していた。

焚き火の前で読みたくなるプロジェクトチームのおすすめ本

ビーパル編集長、沢木が選ぶ4冊

野田知佑さん、椎名誠さんに憧れ、冒険譚をなぞるように追いかけた沢木が今なおひんぱんに読み返し、大切にしている本。そのなかでもキャンプの夜に焚き火の前で読みたくなるのが以下の4冊だ。

「こぎおろしエッセイ のんびり行こうぜ/野田知佑 (小学館)」
「日本の川を旅する カヌー単独行/野田知佑(日本交通公社)」
「冒険図鑑/さとうち藍 文 松岡達英 絵(福音館書店)」
「改訂増補 牧野新日本植物圖鑑 /牧野富太郎(北隆館)」

「私にとって、アウトドアのきっかけが野田さんで、この2冊は初版で手に入れて何度も読み返しました。

『のんびり行こうぜ』はビーパルの連載をまとめたもので、自然のなかでどう過ごすかが詰まっています。また、『日本の川を旅する』は、読むたびに川旅に出向きたくなる本です。

ここでは紹介していませんが、野田さんが亡くなってからの本、『完全保存版 カヌーイスト野田知佑メモリアルブック(小学館)』を手掛けることができ、本当に良かったと思っています。

そして、『冒険図鑑』はアウトドアの基本がイラスト入りで詰まっており、この一冊でほぼ網羅しているほど。手旗信号などもあり、防災面で役立つ情報も盛り込まれています。

『牧野新日本植物圖鑑』はとにかくボリュームがすごい。これをおひとりで書かれた、描かれたと思うと、同じ本を作る立場として畏敬の念を感じざるを得ません。

ここで紹介させていただいた本から得た知識は、私の骨のなかに入っています」

トーハン、長井さんが選ぶ4冊

ホンジュールカーの選書も手がけるトーハンの長井さんは、「一度に持っていける冊数は多くて200冊。限られた数ですが、本を手にとっていただける方にとって、運命の一冊になってほしい」と、『CAMP with BOOKS』に期待を寄せる。

ホンジュールカーの選書ほか、市場開発も手掛ける長井悠さん。休日はサウナ巡り。ファゴットという木管楽器の演奏も。

『CAMP with BOOKS』プロジェクトを取り組む前に「自分にとってアウトドアとは」を考え、選んだのがこの4冊。実際に焚き火を前にして「スッと入っていけた」のは、本での知識があったから。

「14ひきのあさごはん/いわむらかずお(童心社)」
「ロング・グッドバイ/レイモンド・チャンドラー著 村上春樹 訳(早川書房)」
「ナスカ 砂の王国/楠田枝里子(文藝春秋)」
「西の魔女が死んだ/梨木香歩(新潮文庫)」

「絵本『14ひきのあさごはん』は小さいころから読んで、今なお大切にしている本。最初に焚き火のシーンから始まるんです。私にとってアウトドアのイメージは、まさにこの絵本のとおりで、実際に焚き火を前にしてこの本の内容と同じことがありました。

『ロング・グッドバイ』はアメリカ人作者によるハードボイルド小説なのですが、夜、あたりが真っ暗のなか、焚き火の前で読むと雰囲気が増して物語に没頭できます。

『ナスカ 砂の王国』は、砂漠で遭難したシーンから物語が始まります。自分の生活とはかけ離れた内容ですが、焚き火も物語も非日常。より一層のめりこめました。

魔女の修行を通して、自然のなかでの暮らしをえがいた『西の魔女が死んだ』は、日々の“日常”とアウトドアでの“非日常”の、ちょうど間にあるような世界観です。

「14ひきのあさごはん」を手にとって紹介する長井さん。

ここで紹介した本はいずれも、キャンプに持っていって普段の生活に戻ったときに『あのときこの本読んだな~』と、アウトドアの思い出と一緒に記憶に残すことができます」

トーハン、海老澤さんが選ぶ5冊

「都内の宿に泊まるのが好きなんです。何もしないために行く。あえて制限された場所でごはんを食べて、じっくり本を読む。これってキャンプでも同じことで、都内の宿は非日常を楽しむ場所。頭がすっきりします」。

そう語るトーハンの海老澤さんも、焚き火に持っていきたい本に絵本を含めた。

「絵本は疲れたときでもスッと入っていけます。大人でも気負いなく手にとってほしい」と語る、海老澤満さん。休日は子どもと公園で鬼ごっこか、家で本を読むことが多い

本はコミュニケーションのひとつ。ファミリーキャンプならば、子どもたちがアウトドアという特別なシーンで触れた本という思い出を持ってほしい。その想いも込めて選んだのが以下の5冊だ。

「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬/若林正恭(KADOKAWA)」
「ひなた/吉田修一(光文社)」
「村上T―僕の愛したTシャツたち―/村上春樹(新潮社)」
「しかけえほん きょうりゅうたち/きのしたけい作 しんたにともこ絵(コクヨ)」
「おばけのかわをむいたら/たなかひかる(文響社)」

「お笑い芸人、オードリーの若林正恭さんが書いた『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』は、本人がキューバに行ったときのお話。表向きはエッセイですが、実際は旅本。ひとり旅だけど、ずっと誰かと対話しているような、誰かのことを考えているような。読み進めていくにつれ、その意味が分かってきます。旅の情景含めて、キャンプシーンに合うと思います。

私的に“人間関係”に興味がありまして、キャンプに行ったときに、改めて自分の考えてることとかを整理するための材料として、本を使うのがいいなと思い、選んだのが『ひなた』です。この本は題名こそあたたかいけれど、人間の底をえぐるみたいな書き方なので、全然あたたかくない。こういう物語を読みながら、小説そのものというよりは、人間関係を俯瞰してみるような使い方がおすすめです。

村上春樹さんがTシャツを収集するのが好きだというエッセイ『村上T』。まさに焚き火の前でお酒を飲みながら、Tシャツにまつわる旅のストーリーまで想像して、リラックスしながら読めます。

村上春樹が旅先で購入したTシャツも登場する。

絵本は小学校1年生の子どもに、キャンプでお父さんに読んでほしい本はどれ? と、選んでもらいました。

『きょうりゅうたち』などの図鑑は子どもの方が知識が多いので、教えてもらいながら親子のコミュニケーションを取るのに向いています。『おばけのかわをむいたら』は文字も少なくて簡単に読めちゃいます。読むたびに笑いが起きるし、家族で笑顔の共有ができてキャンプにぴったりだと思います」

ファイヤーサイド、小松さんが選ぶ4冊

ファイヤーサイドの小松丈人さん。休日は薪割りを行ない、自然に近いフィールドで過ごす。今、挑戦したいのは小屋づくり。将来は「田渕義雄さんのような暮らしがしたい」とも。

「出張ではキャンプ場に泊まることもあります」。そう語る小松さんは、根っからのアウトドア派だ。ファイヤーサイドに入社するきっかけとなったが、故・田渕義雄さんの本との出会い。

同社に入社して憧れの田渕義雄さんの担当となり、近くで接するようになってからは、より一層の影響を受けたとのこと。もちろん、焚き火に持っていきたい本には、田渕義雄さんの著作が3冊含まれる。

「森暮らしの家 全スタイル/田渕義雄(小学館)」
「寒山の森のエッセイ/田渕義雄(ファイヤーサイド・グッドライフプレス)」
「森からの伝言/田渕義雄(ネコ・パブリッシング )」
「自然の鉛筆/宮崎学(IZU PHOTO MUSEUM)」

「きっかけは田渕義雄さんの『森暮らしの家』でした。自然とともに暮らす田渕さんに影響を受けて、この表紙のお家にもすごく憧れていました。

『寒山のエッセイ』はファイヤーサイドのWebで連載していた記事をまとめたもので、田渕さん亡き後に追悼遺稿集として刊行しました。

田渕さんの物言いは、よく言えばストレート。その言葉が心地よくて、包み隠さず語る様子がこの一冊に詰まっています。また、田渕さんは家具づくりでも有名で、『森からの伝言』では、その一端を窺い知ることができます。

『自然の鉛筆』の写真家・宮崎学さんは、ファイヤーサイドの近くを活動拠点としており、南信州の動物の撮影をライフワークにされています。本を開くと、近くにこんな動物がいたのか…とびっくりする内容で、写真のアングルもとても素敵です。焚き火の前で写真集を眺めるのって、良い時間ですよ」

本を読んだあとに、焚き火の前で仲間と語り合うのも楽しい。

そんな“本 × アウトドア”を提唱する『CAMP with BOOKS』の取り組み。同プロジェクトとして、2024年5月18日~19日で行なわれる「BE-PAL FOREST CAMP 2024春(PICA八ヶ岳明野)」で、宝酒造株式会社と共同ブースを展開した。

また、同年6月28日~30日に幕張メッセで行なわれた「東京アウトドアショー 2024(TOKYO OUTDOOR SHOW 2024)」にも出展した。

ホンジュールカーの本を手に取り、会話が弾む。

ホンジュールカーが、近くのキャンプ場やアウトドアフィールドに現れるかもしれない。もちろん移動式本棚には最高の本をたくさん詰めて。今後のワークショップや『CAMP with BOOKS』の参加型イベント、各種活動は、ビーパルでも発信していく。ホンジュールカーを通して、アウトドアシーンに合う最高の一冊を見つけよう。『CAMP with BOOKS』の活動をお楽しみに!

『CAMP with BOOKS』

小学館ビーパル https://www.bepal.net/
トーハン https://www.tohan.jp/
ファイヤーサイド https://www.firesidestove.com/