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採用件数は440件以上!複業の仕事として自治体を選択肢に入れるべき理由

2024/10/08

※この記事は「ダイム」に掲載されたものです。

複業人材を登用する潮流は、民間企業に限らない。全国の自治体でも専門家を複業人材として登用し、課題解決を進めている。そんな自治体の複業登用を後押ししている大林尚朝さんに、近況を伺った。

Another works
代表取締役
大林尚朝さん

Another worksを2019年に創業。複業したい個人と企業をつなぐ総合型複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」(登録者数は約8万人)を運営している。

無報酬で始められるので複業の第一歩におすすめ

Another worksが2020年に始めた「複業クラウド for Public」は、地方創生を推進する複業マッチングプラットフォーム。47都道府県・累計130自治体の複業人材登用を支援してきた。登用の背景には地方自治体の人材不足がある。

「民間企業とは異なり、自治体は公務員を一括採用するため、雇用の柔軟性がありません。約3年で異動するジョブローテーションによって専門スキルが習得しにくいとの不満から、人材が定着しない課題があります」(大林さん)

自治体では特にPRやDXのスキルを持つ人材が不足しており、求められることが多い。なお「複業クラウド for Public」は社会貢献を目的とするプロボノ(無報酬)の案件が半数以上を占め、これが働く側の利点にもなっている。

「行政の仕事は週1回の打ち合わせがほとんどで、ほかの仕事への支障はほぼありません。複業禁止の会社に所属する人でも、プロボノだから参加可能です。複業の初心者は行政との仕事から始めるのをお勧めします」(大林さん)

最も求められている人材はマーケター。DX推進や観光計画策定などを含むエグゼクティブ・コンサルの募集も多い。広報分野はSNSの運用、炎上対策、マニュアル作りなどが含まれ、民間企業での知見が高く評価されることが多い。
まずは自治体からの依頼を「複業クラウド」に登録する約8万人に配信。応募した登録者の中から、書類選考とオンライン面接を経て登用者が決まる。有償と無償の案件があり、後者の場合は週1回のオンラインミーティングに参加するケースが多く、負担は軽い。

自治体が複業人材に求めるポイントは?

自治体での複業では、特殊な専門性やスキルはそれほど必要ないケースが多いと大林さんは言う。

「民間企業でやってきたことを伝えるだけでも、行政には価値があるものなのです」(大林さん)

行政と民間企業には、業績や仕事の品質に対する考え方にギャップがあり、それだけに民間企業の知見が役立つことも多いようだ。

なお、行政との仕事で最も重要なのは「コミュニケーション力」。例えば、ChatGPTのことを説明する場合、生成AIの概念をわかりやすく言語化でき、行政で使用する際の注意点を的確に伝えられる人が適任だとか。行政側が求めていることを理解し、言葉選びに気を配れるスキルも必須となる。

そのため、横文字の専門用語をひけらかす、または、Slackなどの先端的なツールを当然のこととして押し付けるコミュニケーションは、絶対にうまくいかない。行政側に連絡する時間帯をはじめ、相手に合わせたコミュニケーションを取れる人が面談では評価され、登用の確率が高まるそうだ。

【石川県能登町の場合】約6億円という経済効果を算出

[募集人材]経済効果算出アドバイザー

白尾敏朗さん(国内総合コンサルティング所属)

津波を受けつつも損傷がなかった能登町の巨大モニュメント「イカキング」(全長13m)。2021年に設置された際は税金の無駄遣いというバッシングを受け、登用された人がボランティアで現地調査を実行。「イカキング」の経済効果を6億円と算出し、傷ついた住民のプライドを回復させた。

【千葉県茂原市の場合】ふるさと納税額が初の1億円超に

[募集人材]ふるさと納税戦略アドバイザー、ECマーケティングアドバイザーh3

[左]佐藤徹也さん(地域創生コンサルティング)
[右]小笠原さん(都内IT企業所属)

ふるさと納税の戦略アドバイザーとして、コンサルとIT企業所属者の2名を登用。返礼品を紹介する写真の品質向上、関連するWebサイトのデザイン変更、SNSを含む広告運用の改善などを行なった結果、令和5年度のふるさと納税額が前年度比1.9倍となる1億5000万円を達成した。

【奈良県下市町の場合】SNSのフォロワーが200人→2600人に

[募集人材]SNSマーケティングアドバイザー

左から 寺山小弥子さん(企業代表) 川嵜忠佑さん(フリーランス) 和田崇太郎さん(フリーランス)

奈良県の出身者および在住者から、SNSマーケティングアドバイザーとして3人を登用。PR戦略、写真撮影、YouTube運営といった分野の各専門家が持っている知見を生かし、町の魅力を県内外に対して発信。5か月間で公式Instagramのフォロワーを13倍に増やすなどの成果を上げた。

【岐阜県飛驒市の場合】シンポジウムの参加者が2倍に

[募集人材]関係人口創出パートナー

[左]山田みかんさん(企業代表)
[右]シュウジさん(フリーランス)

全国的に見ても人口減少が急激に進む飛驒市は「関係人口」を創出するための複業人材を募集。広報のプロと映像のクリエイターを登用した。情報発信の改善や動画の作成により、同市の主催する関係人口のシンポジウムの参加者が前年比で200%に。7件のメディア掲載にもつながった。

取材・文/小口 覺