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移住に関する意識調査から分かった「若者が移住をためらう理由」第1位は?

2025/05/07

総務省が実施している住民基本台帳に基づく2023年の人口移動報告によると、東京都では転入者が転出者を上回る「転入超過」が68,285人となり、前年比30,262人増と2年連続で増加となった。東京圏への人口流入超過はコロナ禍以前の水準の85%程度まで戻ってきているといわれるが、今なお東京圏への一極集中が続く状況の中、全国の自治体が移住・定住の促進施策に力を注いでいる。そんな地方移住の現状の中、一般社団法人 移住・交流推進機構JOIN(以下「JOIN」)が2024年4月に発表した調査から若者の移住志向を探った。

移住・交流推進機構JOINとは…?

JOINは、都市から地方への移住を推進し、自治体の移住・関係人口施策を推進することで地域の活性化を目指す団体である。全国の自治体の移住担当者と移住希望者、地方創生の領域でビジネスを展開する会員民間企業の三者を繋ぐ役割を果たす組織で、1,700を超える地方自治体の85%が会員として加入している。会員の民間企業は、移住・関係人口の領域でビジネスを展開する66社(令和6年12月時)が加入している。また、総務省と連携して地域おこし協力隊の振興にも取り組んでいる。移住に関する最新の調査結果について、JOIN事務局の小森さんに話を聞いた。

小森 康平 長崎県諫早市からJOINに出向中。趣味はタロット占いとガーデニングのほんわかタイプ。

小森さん:私は長崎県諫早市からの出向で、令和5年度からJOIN事務局で勤務しています。事務局はほぼ自治体や民間企業からの出向者で運営しています。JOINでは、自治体の移住・交流施策を支援する事業を中心にしていますが、その中で毎年移住や地域おこし協力隊に関する調査レポートを発行しており、令和6年度は、地方への移住や田舎暮らしに興味がある20代~30代の男女を対象に移住に関する意識調査を実施しました(令和7年3月発表予定)。

移住を妨げる要因1位は「金銭的な不安」、2位は「人間関係の不安」

平成29年(グラフ右)、令和3年(グラフ中央)、令和5年度(グラフ左)の定点的な意識調査(によると、東京圏の移住に関心のある若者(20~30代)が移住を妨げる要因として連続で一番多く挙げているのが、「移住先では求める給与水準にない」の項目となっている。年ごと割合にばらつきがあるが、以下に「人間関係の不安」「移住に向けた資金がない」と続く。

小森さん:調査では金銭的な不安を挙げられる方が多い印象ですが、移住に関心がある方がその地域での生活について具体的にイメージしにくいことも一因になっていると考えています。各自治体は、「わがまちの魅力」を伝えること、わからないことからくる不安を解消するような情報発信に工夫を凝らしています。海・山・都市と田舎の両方がある地域など、全国には多種多様な自治体があるため、希望にかなう自治体が必ずあるはずです。希望する条件などを具体的にイメージして、情報感度を上げてもらいたいです!

顔の見える手厚いフォローが移住につながる

小森さん:定点調査では、依然として引っ越し費用の助成や家賃補助など、住宅関連の補助を望む方が多いです。それに呼応するように自治体も移住者向けの賃貸住宅の整備や、空き家バンクの情報整理などに力を入れています。やはり「住」と「職」の不安が解消することが移住希望者の背中を押す要因となっていることが分かりますが、自治体も人口減少で税収も落ち込む中で持続可能な施策として打ち出すのに苦戦しているようです。

近年、メディアでも「移住」という言葉をよく聞くようになったが、東京圏への一極集中の状況は変わっていない。移住について「どちらかというと興味あり」や「やや興味あり」の人に具体的に移住をイメージしてもらうには、少しハードルがあるようだ。

小森さん:相談会などに参加してくれた方に対して、手厚いフォローが移住につながる成果につながっていると感じます。最終的には担当者の熱意と人柄が決め手になるケースも多いので、移住担当の皆様には「顔の見えるフォロー」を重視して頑張ってもらいたいです。また、オーソドックスですが、まずは知ってもらうことですそ野を広げ、足を運んでもらった際に現地のいろいろな人とつなげることが重要です。

移住に関心のある民間企業とのマッチングも

地域のことを効果的に知ってもらうことや、移住につながる関係人口を増やす施策などは、自治体担当者が単独で行うのが難しい場合もある。そういった場合にはどうすべきかについても、小森さんに伺った。

小森さん:JOINには移住や関係人口といった領域でビジネスを展開する会員企業に多数ご加入いただいています。こういった領域は民間企業の得意分野であるケースも多くあります。課題を整理してJOINにご相談いただければ会員企業とのマッチングをお手伝いさせていただきます。また、JOINには移住・交流分野での官民連携に関する助成金もあります。大きな官民連携のきっかけとなるケースも多々ありますので、自治体の担当者様、移住や関係人口に関連する領域で自治体との協業にご関心のある民間企業様もお気軽にお問い合わせください。

小森さん:また、JOINでは、年に一度回東京ビッグサイトで全国の自治体が一堂に会してブースを出展し、直接相談・情報収集ができるイベント「JOIN移住交流&地域おこしフェア」を開催しています。詳しくはJOINのホームページをご覧ください。

「JOIN移住交流&地域おこしフェア」
https://www.iju-join.jp/feature_cont/file/135/

紹介した調査レポートはJOINホームページで公開されている。今回は若者の移住を妨げる要素についてクローズアップして紹介したが、ほかの調査レポートも公開しているので、是非参考にしてほしい。

調査レポート
https://www.iju-join.jp/join/research.html

構成/小口裕史(一般社団法人 移住・交流推進機構JOIN)