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BE-PALが本気で取り組む、自然を活用した「アウトドア地方創生」とは?

2025/07/31

「自然を手でつかもう!」をキャッチフレーズに、1981年に創刊した小学館のアウトドア情報誌『BE-PAL(ビーパル)』。以来、雑誌・イベント・ウェブサイト・SNSと、多彩なコンテンツで外遊びや自然花ライフスタイルの魅力を伝え続け、2026年には45周年を迎えます。

「主な読者は、子育て世代の男性とファミリーです。キャンプや自然遊び、アウトドア料理のレシピなど家族でシェアできる内容が多いので、夫婦や親子で読まれています。そのおかげで、読者がBE-PALとともに年を重ね、今では3世代で楽しんでいただいているご家庭も多くいらっしゃいます。年2回開催しているキャンプイベントでは、若いファミリー層を中心に、創刊当初から愛読している70代以上の方まで、幅広い年代で賑わっています」とは、2018年から編集長を務める沢木拓也編集長です。

読者と一緒に「自然を楽しむメディア」

誌面やコンテンツに編集部員が登場することが多い『BE-PAL』。大きな強みの一つが、読者との距離の近さです。「BE-PALは、編集部員が読者と同じ目線に立ち、自然の中で遊んだり、発見したりと、一緒に学びながら、アウトドアに造詣が深い編集者・ライターと作っています。創刊からずっと、初心者に分かりやすいことを第一に、楽しむ心と広い視点を持つことも忘れないようにしています」

春と秋、年に2回開催しているキャンプイベント。多くの協賛ブースで賑わう。

『BE-PAL』といえば、全国各地で主催するリアルイベントも人気です。1980年代には参加者3000人以上の大規模なイベントを開催し、その後は北海道や茨城県、青森県八戸市に山梨県北杜市など日本全国さまざまな場所でキャンプイベントを開催してきました。

「読者の皆さんとは、どこか仲間のような雰囲気なんです。キャンプイベントのほかに、SUVの試乗会などのイベントを開催していますが、いつも和気藹々としています」

1990年にはウェブサイトをいち早く立ち上げ、オリジナル記事やブログなどを発信し始めました。また、近年では公式LINEや各種SNSでの発信にも力を入れ、新しい読者との出会いも大切にしているのだとか。

「公式LINEやSNSは、誌面よりさらにアウトドア初心者の方に向けた内容をメインにしています。雑誌の発売日に合わせてやっているインスタライブは、イベントに来られない遠方の方ともお会いできるいい機会。もっともっとBE-PALを認知していただき、自然を楽しむ仲間が増えたらと考えています」

現在では、雑誌という枠組みを飛び越え、地方創生や地域プロデュースにも関わる『BE-PAL』。今回は、自然を楽しむメディアとして、この豊かな資産をどう活用できると考えているのか、「自然を活用した地方創生」について語ってもらいました。

豊かな自然の”おもしろさ”を伝える

全国的に、豊かな自然はあるものの、その魅力を伝えきれないという悩み持つ自治体は多いようです。

「まず、編集部員はおもしろさを見つけるプロフェッショナルです。その地域の人が『何もない』と感じていても、外部の視点で見つめ直し、楽しめる企画にする経験があります。海、山、川、生き物にアウトドアと自然を知り尽くしたスペシャリストもたくさんいます。そうしたさまざまな知見と経験から、読んだ人が興味を持って、その地域に行ってみたくなる”おもしろさ”を伝えていくことが大事だと考えています。

また、長年イベントを主催してきた経験もあるので、イベントの開催も全面的にサポートできます。メディアとして雑誌、SNSなどで発信することもできるので、イベントの企画から運営、情報発信、イベントレポートまで、すべて一貫性を持って提案できるフットワークの軽さも強みでしょうか」

「山陰海岸ジオパーク」との取り組みはその一例かもしれません。

山陰海岸ジオパークトレイルは、ルートの設定から、PR動画制作、イベント実施、モデルルートの情報発信など、幅広く関わっています。

「京都・兵庫・鳥取にまたがる『山陰海岸ジオパーク』の中でも、ハイライトスポットの多くがある鳥取県との企画は2011年からはじまりました。そもそも『ジオパーク』という言葉自体があまり知られていない当時、この概念やそのエリアの素晴らしい自然についてBE-PALが発信したことから始まり、このエリアでのキャンプイベント、ハイクイベントなどを開催してきました。2015年、このエリアを貫くロングトレイル『山陰海岸ジオパークトレイル』を設定する構想が生まれました。総延長230kmになるトレイルルートの設定やPR動画の制作、各所でのハイクイベントを実施。さまざまなアクティビティとハイクを組み合わせた新たなプランの情報発信など、様々な取り組みは今も継続しています」

山陰海岸ジオパークトレイル 鳥取県岩美町をとことん楽しむハイク&アクティビティーの旅その1「透明度がスゴい! 浦富海岸を遊びつくそう」コース9

継続的なプロジェクトと人づくりも大切

自然という資産を活用する中で、沢木編集長が次に大事だと考えるのは「継続的な人づくり」です。いくらお金をかけて見た目のよいものを作っても、それだけでは続かないといいます。

「全国のキャンプ場やグランピング施設などで、施設は作ったけれどそこを運営する人がいない、キャンプやアウトドアが好きな人材がいなくてどうしたらいいか困っている、という話もよく聞きます。持続の肝になるのは“人づくり”。地域の皆さんが、自らの力で続けられるような組織づくりが大事ではないでしょうか」

パルパーク第1号山田緑地でボランティア講座を開催。

こうしたケースの一つが『パルパークプロジェクト』。北九州市と包括連携協定を締結し、「公園からニッポンを変えよう!」を合言葉に、山田緑地で「理想の公園づくり」を行ってきました。その中で、ボランティアスタッフを養成する「森の焚き人養成講座」を開設。親子に焚き火講座や木の体験を提供する人材を育成し、現地の人たちが自走できる、持続可能な仕組み作りも大切にしています。

【パルパーク・ プロジェクト】北九州市山田緑地・里山を再生するボランティア講座の集大成!

「地域活性化のお手伝いをさせていただくときに、一度きりで打ち上げ花火的に終わってしまうのはもったいないなと感じます。その地域に何度も足を運び、地域の人々と関係を築き、人の育成なども含めて継続的なプロジェクトとしてやり続けることが大事だと考えています」

読書✕焚き火✕キャンプのアウトドアライフを提案

読書とキャンプ&焚き火のアウトドアライフを提案するプロジェクト『CAMP with BOOKS』

広い空の下、焚き火にあたりながら、のんびり読む本は格別。『CAMP with BOOKS』は、そんな楽しみを伝えたいという出発点のもと、『BE-PAL』、出版取次会社の『トーハン』、薪ストーブから焚き火まで手掛ける『ファイヤーサイド(FIRESIDE)』が一体となってスタートしました。

「本の移動販売車『ホンジュールカー(Honjour! Car)』とともに、焚き火のワークショップやキャンプ料理イベントなど、自然の中での過ごし方の提案、おもしろいコンテンツづくりはお任せください。出張する場所は、イベントのブースやキャンプ場、道の駅など、焚き火できるならどこへでも。日本各地に増えている無書店地域に出張することも視野に入れています」

荒廃していく自然を「アウトドア地方創生」で活用する

「放っておくと、自然はどんどん荒廃していってしまいます。放置された山林、放置竹林は今、全国の地域が抱えている問題です。自然をフィールドにした遊び場をつくったり、地域の資源を活用することで、荒廃していた自然が整備されれば、持続的な環境保全にもつながるはずです」

これからも、自然の中で遊び続けたい、大好きな自然を楽しみ続けたいと願う『BE-PAL』。今後について尋ねると、各地の情報をもっともっと知りたいとのこと。

「日本各地には、まだまだ魅力的な地域がたくさんあります。どう自然を活用したらいいかわからない、荒廃している自然をどうにかしたい。そういう想いはもちろん、こんなおもしろい取り組みや人がいるという情報も大歓迎です。地方のことを自然をテーマに拾い上げ、広く知ってもらえるように、雑誌、ウェブ、SNS、イベント、プロジェクト、それぞれに合ったさまざまな形で提案していきたいと考えています」

取材・文/ニイミユカ 写真/黒石あみ(小学館写真室)