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鹿児島県大隅町で地域の課題に向き合うものづくりを続ける「Kruhi」の新たな挑戦

2025/06/26

国内の未利用資源を活用し、自然由来成分100%で、地球にも使う人にもやさしいものづくりを行っているのが「Kruhi(クルヒ)」です。2022年9月にヘアケアアイテムである石けんシャンプーとトリートメントでデビューし、2025年4月には、2種のスキンケアアイテムも登場しました。そんな「Kruhi」の新たな挑戦は、耕作放棄地を活用して「くるひ自然植物園」を作るというもの。そこには、未利用だったものや場所を活用して、新たな価値を生む受け皿になればという思いがありました。

今まで破棄されていた規格外の農作物や未利用資源を活用

Kruhiについて紹介する(右)井浦新さんとあいさん。

自然由来成分100%で、自分の健康と環境に配慮したものづくりを行う「Kruhi」は、俳優の井浦新さん・あいさん夫妻が手掛けるブランドです。ブランド名の「Kruhi」とは、大和言葉で、明日やいつか来る未来を意味する言葉から命名。また、一陽来復の真ん中の陽来を逆転させると「来陽(くるひ)」となり、これから訪れる未来がすばらしい日であるようにとの思いが込められたブランド名になっています。ブランドを創業したきっかけは、家族の髪への悩みがそれぞれ違ったことからです。これだというヘアケアに出会えなかったときに石けんシャンプーと出会い、使い心地を改善し、使い続けたくなる石けんシャンプーを自分たちで作ろうと考え、工場探しからスタートしました。また、規格外などで今まで廃棄されていた農作物や未利用資源を活用することもブランド創業時から行っています。

「世の中にはいいものがたくさんあるからこそ、設計図の部分にこだわったものづくりを行っています。今まで利用されていなかったり、捨てられたりしていたものを活用して、新しい価値を生む受け皿になればいいなと考えています。」(井浦新さん)

シャンプーとトリートメントには、鹿児島県大隅町産のパッションフルーツをアップサイクルしたものや、バームには、連作による土壌の養分バランスを防ぐためニンニク栽培の途中で栽培されるハイビスカスローゼルを活用しています。未利用だった資源について活用方法を調べ、肌や健康によいことがわかると、それらの資源を活用するという、効率よりも品質を重視したものづくりを行っています。2025年4月には、クレンジングとセラムも発売されました。

高知県四万十町のユズのエキス、北海道下川町のトドマツエキスなども配合

(左から)Kruhi ザレイヤーセラム 30mL 13,200円/ザフェイスクレンズ 200mL 5,445円/マウントナリン ボタニカルシャンプー 250mL 4,070円/マウントナリン ボタニカルトリートメント 250mL 4,730円/オールウェイズ ニューバーム 35g 4,950円/ボタニカル石けんシャンプー キャンディフォレスト(ポンプ付き) 400mL 4,800円/ボタニカルトリートメント キャンディフォレスト(ポンプ付き) 400mL 5,470円(すべて消費税込み)

「ヘアケアやバームは、鹿児島県大隅町で地域の課題に向き合うものづくりを続け、新発売のスキンケアアイテムに関しては、鹿児島に限らず、北海道、奈良、高知、佐賀など、全国に視野を広げ、多くの生産者や作物との出会いで開発に取り組みました。」(井浦あいさん)

セラムにはボトルに遮光シールが施され、Kruhiというロゴから2色のグラデーションが見え、使い終わるころにはメッセージが現れます。クレンジングには、これまでの製品同様リサイクル効率のよいアルミボトルが採用されています。

今回、新登場したのは、「Kruhi ザフェイスクレンズ」と「Kruhi ザレイヤーセラム」です。この2アイテムに採用されているキー成分となるのが、和歌山県築野食品が独自製法で圧搾したコメ胚芽油です。まずは、よい土台(素肌)がないと成分が浸透しないため、クレンジングが必要と、γ‐オリザノールを豊富に含むコメ胚芽油に天然クレイを配合してクレンジングを開発。肌の水分蒸散を抑え、クレイが余分な汚れを吸着してくれます。高知県四万十町のユズのエキス、北海道下川町のトドマツエキスなども配合され、うるおいを与えながら汚れをオフできます。ジェルタイプで、顔全体に広げ、ゆっくりマッサージするように汚れになじませると、ふっと指が軽くなる瞬間があります。それが乳化のサインで、あとは洗い流すのですが、マッサージをしていると、心地よい香りに包まれます。実は、Kruhiでは、使いながら香りの景色も楽しんでもらいたいと井浦新さん自ら製品ごとに天然精油で調香しているのです。スキンケアタイムが楽しくなりますね。

セラムは、水層と油層の2層に分かれていて、使う直前に振ってブレンドして使うタイプです。油層には、クレンジングにも配合されているコメ胚芽由来のγ‐オリザノールと、四万十町のユズや佐賀県唐津島のツバキ種子油などが配合されています。そして、水層には、コメヌカ由来ビタミンB様物質イノシトールが1%配合されています。この1%がポイントのようで、乾燥肌も脂性肌も一番バランスの良い状態に導いてくれるというのです。

イノシトールを塗布した時の皮膚の水分量と皮脂量の計測値。水分量が増え、皮脂量は、標準値になっていることがわかります。

先行発売された3月末から愛用していますが、乾燥肌で花粉の時期はマスクあれもあり、頬がかさかさする筆者ですが、今シーズンは調子がよく、もう手放せません。水層には、ほかにもトドマツ蒸留水や、奈良県大和郡山市にある健一自然農園の萎凋香緑茶蒸留水と茶葉や茶花エキスも配合されています。香りにも萎凋香緑茶がブレンドされています。

原材料の種類も多く、地域も全国各地に広がっていますが、共通しているのは、環境に配慮したものづくりの中で、未利用だった部分を活用しているということ。トドマツなどは、メインとなる大木は活用しても、枝葉は未利用であるなど、従来活用されていない部分が多いことを改めて知る機会になりました。俳優業も忙しい中、各地に足を運んで、自分の目で見て、原材料を選ぶという井浦さんご夫妻から、新たな取り組みも発表されました。

鹿児島県南大隅町の耕作放棄地を活用した「くるひ自然植物園」を準備中

地域の資源を次の世代へ受け継ぐ取り組みでもある「アーセンキッチン」について説明する農業生産法人アーセンキッチン株式会社 代表取締役 肥後十蔵さんと、井浦新さん、あいさん。

今後も日本各地の未利用資源を活用するということは変わらず、さらに踏み込んで、原材料の一部を自分たちでも育てていこうという考えのもと、鹿児島県南大隅町とのご縁を機に農業生産法人「アーセンキッチン株式会社」を2024年4月に立ち上げています。南大隅町で無農薬で農業に従事し、Kruhiのバームの原料であるハイビスカスローゼルを栽培している肥後十蔵さんとともに耕作放棄地を利用し、土からこだわった「くるひ自然植物園」を現在、土づくりから取り組み始めています。植物園で育てた植物は収穫後、植物園内に併設した蒸留小屋ですぐに蒸留し、植物の鮮度をそのまま閉じ込めた蒸留水や精油を確保したいとのこと。

「シーズナルラインを今後作りたいと考えています。」(井浦新さん)

その年の、そのシーズンだけの限定品が誕生するわけです。

「鹿児島県は、島津家が薬草園を作っていた土地です。南大隅町は県内でも最も過疎化が進んでいますが、植物にはいい土地です。」(肥後さん)

井浦さんご夫妻が、肥後さんとタッグを組むことにしたのは、地元の土壌に詳しいだけでなく、肥後さんが取り組んでいる土壌づくりに賛同したことと、描いていた理想の農業・農法が近かったからだそう。それは、自然界の循環を生かした農業です。有機栽培と違い、法律で定義さえていないため、自然農法と呼ばれていても、やり方には違いがあるようです。土を耕さず、自然の摂理によって作物や土壌のバランスを保つ農法で、土壌づくりに大切な窒素、リン酸、カリウムは、海が近いこともあり魚の頭や骨、フジツボ貝を活用し、山の腐葉土などで微生物を培養、発酵させて土壌を作るところから始めています。

「有機物や微生物を投入し、土の地力を上げ土壌生物の活性化を図ってから作物を育てるため、土づくりを念入りに行っています。」(肥後さん)

耕してしまえば、今年の秋には収穫できるのでしょうが、微生物やミミズやモグラが動き回ることで自然に耕されるのを待つため、年月がかかるといいます。「植物が主人公」の場所だからという肥後さんの言葉が印象的でした。また、井浦新さんのように、有名な人が耕作放棄地を活用することや自然農法を行うことで、多くの人に知ってもらえる機会にもなり、自然農法が広がるのではないかとの期待も寄せています。

人にも生態系にも配慮したナチュラルコスメを展開する「Kruhi」。国内の未利用資源を活用し、農業林業漁業に従事する人や社会、地域、環境に循環するものづくりを行っています。これらの製品を使うことで、私たち消費者も循環の仲間入りができると思うと、優しい気持ちでお手入れできそうです。

Kruhi
https://kruhi.jp/

林ゆり
ロハスジャーナリスト。フリーアナウンサー。 関西を中心にテレビ、ラジオ、舞台などで活動後、東京に拠点を移し、執筆も始める。幼いころからオーガニックに囲まれて育ち、MYLOHASに創刊から携わる。LOHASを実践しながら、食べ物、コスメ、ファッションなど、地球にやさしく、私たちにもやさしいものについてWeb媒体やブログで発信中。