子どもたちが地域を取材し、プロのクリエイターと共に本格的なローカルマガジンを制作する「COLOMAGA project」。創造性やシビックプライドを育みながら、地域の魅力を次世代へつなぐ“地域人材のエコシステム”として全国へ広がっている。活動の原点は、子どもたちの素直な視点で地域を再発見し、その価値を社会へ届けること。単なる情報誌づくりにとどまらず、協創や発信を通して自己効力感を育む学びのプロセスでもある。今回は、この仕組みを生み出した株式会社カラーコード代表・浅井由剛さんに、その取り組みと広がる可能性について伺った。
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【浅井 由剛(あさい ゆうごう)さん】
静岡県沼津市出身。株式会社カラーコード代表取締役。京都芸術大学准教授。
2008年に株式会社カラーコード設立。グラフィックデザイン・ブランディングを多数手掛ける。並行してデザイナーの知見を活かした、一般向けのデザイン講座、企業研修の講師を開催している。
COLOMAGA project(コロマガプロジェクト)地元の子どもたちがキッズクリエイターとなり、地域を取材し、プロのクリエイターと一緒にローカルマガジンを制作する活動である。
活動を通して創造性とシビックプライド(地域愛)を育むこと、そして子どもたちの生きる力が身につくプロジェクト。活動開始は、2012年に静岡県伊豆市で発刊された「KURURA」。2025年時点では浅井さんが代表を務める東京都文京区の「MITAMIYO!!」を含め、1都6県20エリア(2025年10月時点)で各地域のメンバーが参画する。
子どもたちが自分のまちを調べ、取材をし、プロのクリエイターから表現を学び、写真を撮り、文章やイラストで表現したものを、プロのクリエイターが誌面作りをサポート、一冊の雑誌が完成する。活動には、子どもも大人も、新旧のまちの住民も、お店の人や働く人も、それぞれの立場で参加できる。子どもの好奇心と大人の本気が地域をつなぎ、発信するプロジェクトである。

COLOMAGA projectの目的は3つ。
・感性豊かな子どもたちが地元を取材し、地域の魅力を発見し、内外へ伝える
・年1回程度の定期刊行を継続することで、創造力と地域への愛着・関心をもった地域人材の育成
・情報誌づくりを通した、地域課題の発見と解決に向けたアプローチ 子どもたちはエディター、カメラマン、ライター、イラストレーター、デザイナーといったプロから必要な知識や技術を講座で学ぶCOLOMAGA projectは、メディアとして地域情報を全国へ発信する情報誌としての役割に加え、地域資源を発見する力と創り出す力を育てる人材育成の役割を担う。
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2008年、浅井さんは地域活性化とデザインの接点を模索する中、小学校での授業づくりに関わる機会を得た。2012年、「地域をロゴにする授業」で静岡県伊豆市の小学校を訪れた際に、ふと、廊下に貼られた子どもたちの地域調査の記事が目に留まった。義務教育での新聞づくりは誰もが経験したことがあるのではないだろうか。個性豊かな新聞は、特定の人にしか目に触れられない。「もっと多くの人に届けられたら」と直感した浅井さんは、「記事を地図にまとめて社会に発信する授業」を行った。子どもたちの反応は驚くほど前向きで、完成したMAPは修学旅行先の上野公園でも配られた。手にした読者から、校長先生に連絡が入るほどの反響があり、次年度は「地域情報誌をつくる授業」に発展した。
子どもたちの創造性が高まると同時に、地域への関心が高まる結果となり、COLOMAGA projectの出発点となった。
子どもたちは取材を通して、自分たちの地域を知らなかったことに気づき、“地域にある”活動や仕事、価値に気づいていく。子どもたちにより主体的にシビックプライドが育まれていることを実感できる事例である。
最初は「人前で話すのが苦手」と言っていた子が、活動通じて自信をつけ、自分の考えを発表するようになる。友達と意見がぶつかっても、話し合いながら一つの作品を作り上げる中で、他者を理解する力や責任感が芽生える。地域情報誌づくりで関わる、両親でも先生でもない、第三者の大人からの評価が自己効力感を高めていく。COLOMAGA projectでの生きた学びは、子どもたちの中に深く根づき、変化を生んでいく。

COLOMAGA projectの参加対象者は10~15歳(小4~中3)。2012年に活動を開始した静岡県伊豆市「KURURA」では、「高校生になっても活動を続けたい!」というKURURA参加メンバーOBOGを中心に、2017年に『こども編集部』を立ち上げられた。それまで大人が担ってきた講座の司会進行、取材先やテーマの決定、インスタグラムの運営や講演などの広報活動を行う。さらには、大学進学をきっかけに「今度はもっと運営に関わりたい!」という仲間を中心に『コネクトチーム』という大学生での運営チームを結成。その名の通り、参加者、こども編集部、事務局を“つなぐ”役目を果たす。主な活動はKURURAの講座やCOLOMAGAの各地域版が集まる「コロマガサミット」の企画・運営、ページネーションの検討、こども編集部の話し合いのお手伝いなど多岐にわたる。進学で伊豆を離れたメンバーがほとんどだが、Zoomなどを活用し、活発にアイデアを出し合い、地元を離れても、活動を続けるメンバーもいる。2024年には、大学卒業後に伊豆市に戻り、大人の制作実行委員会に加わるメンバーも現れた。当初、目標としていたエコシステムとしての活動のサイクルに近づきつつある。
子どもたちに関わる大人たちにも、その影響の輪が広がる。子どもの活動を応援する保護者の中には、事業説明をきっかけに地域活動に携わることとなった方もいる。多世代・多職種の方がCOLOMAGA projectに関わることで、新たなつながりが生まれるきっかけになっている。
浅井氏はCOLOMAGA projectを始める最低限のルールとして、「活動は10年続けるつもりではじめること」を掲げる。その地域で持続可能な実施方法を考えながらスタートを切ることを大前提とする。
また、「子どもファースト」の意識、「プロクリエイターの講座」開催、「冊子としての発行」など、子どもたちが学び、成果を体験できることがルールとして挙げられる。地域情報誌のアウトプットを目指しながら、子どもたちは「伝えること」の本質に向き合い、自分の言葉や表現、創造力を磨いていく。
子どもローカルマガジンCOLOMAGA projectの輪は、地域社会の中で自分の“好き”や不思議に思う“問い”の起点から、他者と協働しながら新たな価値の創造や発信を通し、地域や社会と関わっていける人材育成を目指す。
「はじめはモジモジしていた子も、コロマガに関わった子どもたちは自己効力感が高くなる!」という浅井氏。社会において役に立てる能力やスキルに自信を持った子どもたちが、日本の各地で活躍する日が来ること楽しみに、COLOMAGA projectが全国に発展することを切に願う。
COLOMAGA project ホームページ:https://www.colomaga.jp/
なお、COLOMAGA projectには、キッズクリエイターとして活動した子どもたち自身が、取材や制作を通じて得た学びや気づきを語る発表会や講演活動もあります。
・地域との向き合い方
・創作を通じて育まれた自信・協創の力
・この活動による子ども達や地域への効果・地域課題解決のツールとして など、
本部または各地域実行委員会の講演や、「自分の地域でもやってみたい」方向けの視察の受け入れも可能です。当事者だからこそ伝えられるリアルな言葉は、多くの場で高い評価をいただいています。ご関心のある自治体や教育機関、企業の皆さまは、ぜひお問い合わせください。
構成/伊藤 麻梨子(一般財団法人 地域活性化センター)