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東京駅から地方の課題解決へ!
JR東日本クロスステーション、未利用魚と日本茶を「つなぐ」SDGsイベントを開催

2026/03/09

地域産業はそれぞれ課題を抱えながら、その解決に向けた取り組みに励んでいる。東京にいるとなかなか地方の課題に触れる機会がないかもしれないが、地方や産業の課題を知ることで、日々の買い物の中から少しでも協力できることを発見できるかもしれない。

株式会社JR東日本クロスステーションは、全国農業協同組合連合会(JA全農)、農林中央金庫と共催し、2月21日(土)から3月13日(金)まで、東京駅の「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」で海洋資源と日本茶などをテーマにしたSDGsイベント「つなぐステーション ~海とお茶のSDGs~」を開催中だ。

■「線路の先の生産者と、都市の人々をつなぐ」

東京駅の「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」

本イベントは、水産業における「未利用魚」の課題と、茶業における「後継者不足や規格外品」の課題を掛け合わせ、新たな価値を創造することを目的としている。会場となる「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」では、限定メニューの提供や物販マルシェ、ドキュメンタリー映像の放映が行われ、東京駅という日常の拠点で“環境に優しい選択”を提案している。

株式会社ベンナーズの未利用魚活用サブスク「フィシュル!」

2月21日・22日の2日間限定で開催された「物販マルシェ」では、未利用魚活用サブスク「フィシュル!」を運営する福岡県の企業・株式会社ベンナーズによる「フィシュル!」の商品(未利用魚の加工品)や、奈良県大淀町で200年以上続く製茶農家「嘉兵衛本舗」の茶葉、

製茶農家「嘉兵衛本舗」の茶葉

漁具の再資源化を中心とした事業を行う宮城県気仙沼市のamu株式会社の廃漁網を再生したトートバッグ、瀬戸内かきがらアグリ/JA全農おかやまによる、瀬戸内海の牡蠣殻を土壌改良材として活用し栽培された環境に優しいお米「里海米『きぬむすめ』」など、多様な地域のSDGs商品が販売された。

瀬戸内かきがらアグリ/JA全農おかやまの里海米「きぬむすめ」

また3月13日(金)までは、未利用魚であるクロダイや製造過程で出る「はしっこ茶」、「きぬむすめ」を使用したサステナブルなメニュー「江戸前クロダイ茶漬け(1,980円・ドリンクセット)」を「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」で提供する。このお茶漬けは日本茶アンバサダー協会が監修を行い、出汁なしで“お茶のみのお茶漬け”が実現した。

「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」で提供する江戸前クロダイ茶漬け(1,980円・ドリンクセット)

JR東日本クロスステーションは、本イベントを「つなぐステーション」の第1弾として位置づけ、今後も都市型CSRモデルの柱としてシリーズ化していくという。

本プロジェクトを推進するJR東日本クロスステーションの安井俊太氏は、イベントの意義について、「我々JR東日本グループは、鉄道で地域を繋いできました。その線路の先には、さまざまな課題を抱える生産者の方々がいらっしゃいます。駅が単なる“移動の場”ではなく、人々が集い、地域と都市が『つながる』場となることで、新たな価値を届けていきたいと考えています」と語る。

JR東日本クロスステーションの安井俊太氏(右)

実際に地域の生産者が抱える課題とは、どんなものなのだろうか。

■海の課題:未利用魚「クロダイ」に光を

水産業の課題解決に挑むのは、「フィシュル!」を展開する株式会社ベンナーズ。「フィシュル!」は未利用魚を使ったミールパックを定期便として毎月提供するサービスで、この春で5年目を迎える。現在のアクティブ会員数は1万5000人で、これまでの累計会員数は5.5万人を突破した。

通常はインターネットで定期購入する「フィシュル!」

執行役員の円城寺椋氏は、「私たちは実際にこの未利用魚を積極的に活用した商品・サービスを提供することで、水産業の課題を解決しています。課題の1つ『魚介類の消費量の減少』に対しては、いかに手軽に、簡単に、家庭でお魚を食べていただけるかというところに着眼して、商品開発をしております。そして課題の2つ目、廃棄するはずだったお魚、もしくは売るほどの量が集まらず、漁師さんたちがご自宅で食べることで消費するしか方法がなかったお魚を買い取ることによって、漁業者さんの収入アップにつながると考えております。3つ目の『未利用魚の増加』に対しては、未利用魚を活用することでフードロスの削減にアプローチしております」と、事業について説明する。

ベンナーズ執行役員の円城寺椋氏(中央)

日本の漁業の現状については、「日本の漁獲量の約30〜40%が、味には問題がないのに規格外や認知不足を理由に廃棄、あるいは低価格で取引されています」と指摘した。

お茶漬けに使われた「フィシュル!」のクロダイの「梅生姜漬け」

今回、「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」で発売される限定メニューのお茶漬けではクロダイを提供。「今回は『フィシュル!』の中でも『梅生姜漬け』という味付けをお茶漬けに活用しております。我々は商品開発も全て内製化しており、その時の旬の白身魚、青魚、赤身、どんなお魚にも対応できるような味付けを用意しております。どんな未利用魚でも救えるような体制を整えているので、我々の加工技術や商品開発力というのを活かして、今回のコラボメニューも開発させていただきました」と自信を見せた。また、「クロダイは、近年は磯臭さなどが理由で敬遠されがちですが、水揚げ直後の素早い下処理を徹底すれば、本来の美味しさを最大限に引き出せます。未利用魚を食べることで、漁師さんの収入向上とフードロス削減に繋げたい」と意欲を語った。

未利用魚のクロダイの美味しさを最大限引き出す

「今回のイベントにおけるポイントは、『クロダイの美味しさを知っていただきたい』ということ。東京湾で獲れたクロダイを活用させていただいております。千葉県船橋市で漁業を営まれ、未利用魚の課題に積極的に取り組まれている『大傳丸(だいでんまる)』さんが獲ってきてくださったクロダイを活用しております。そして我々は、こういった東京での物販イベントは今回が初めてです。商品とともに、我々が抱えている漁業の課題や取り組みを知ってもらうきっかけとして、今回のイベントは大変意義のあるものだと思っております」

■お茶の課題:伝統を守り、新たな価値を提案

また水産業同様に、茶業界にも課題が積み重なっている。

一般社団法人日本茶アンバサダー協会代表理事の満木葉子氏(左)

一般社団法人日本茶アンバサダー協会代表理事の満木葉子氏は、同協会について、「日本茶とのコンタクトポイントを作ること、日本茶の良い飲み手を増やすこと、愛のある伝え手を育てること、『日本茶のある暮らし』を未来に伝えることを目的として、2015年に設立しました」と説明。現在、茶業も3つの課題に直面しているという。

インバウンドによる抹茶ブームで売り上げは好調のように見えるが、良い側面だけではないようだ。

「国内外で抹茶は大変ブームになっておりますが、急激な需要の増加で対応が追いついていないところがございます。抹茶に生産を切り替えていく生産者さんたちが増えたことで、今度は煎茶が足りなくなってしまう、あるいは値段が高騰する、そういった状況がございます。日本も一生懸命、増産していますが、中国や諸外国でも抹茶の増産が始まっていて、今は中国が抹茶世界第1位の生産国です。日本のお茶業界はこれからどうなっていくのか、どうしていくのかという局面に来ております」

また気候変動や生産者の高齢化による影響も大きい。

「これまでと同じような栽培をして、例年と同じ暦で作っていったものが、なかなか通用しなくなってきています。高齢化、担い手不足もどの分野でも起きており、肥料や燃料などの生産と輸送コスト、資材価格が高騰していますので、その影響が当然、茶業にも及んでいます。中でも輸送コストが上がり、『お茶より送料の方が高い』という状況も起きています。これだけ長い産業ですので、新しい商品開発や飲み方の提案など、個々の生産者さんたちが一生懸命知恵を絞っています」

江戸時代から200年以上続く奈良県・嘉兵衛本舗の茶葉

また茶業界固有の課題として、消費量の減少も重くのしかかっている。

「どうしてもこのせわしない生活の中で、『急須でゆっくりお茶を入れて飲む』ということが減ってしまっており、茶葉の消費量が減っている現状があります。また、生産者にとっても労働集約型で身体的な負担が大きいです。特に高級なお茶の生産地は傾斜地にあるため、登るだけで息が切れます。ご高齢のお父さんお母さんが機械を使ってお茶を刈っているところもあり、体力が必要というところで女性の参入も難しい。若い人たちが『お茶農家になりたい』と参入することが高いハードルになってきています」

満木氏は、「お茶の消費量が減る中で、耕作放棄地が増え、里山の景観が失われる危機にあります」と語り、「今回(「JAPAN RAIL CAFE TOKYO」で)提供するお茶漬けには、嘉兵衛本舗さんの製造工程で出る『お茶のはしっこ』を活用しました。単に捨てないだけでなく、新しい価値を提案することが重要です。難しく考えるのではなく、ただ『美味しい』と日本茶を飲んでいただくだけで、地域の雇用を守り、環境保全に貢献することに繋がります」と期待を寄せた。

■4つのサステナブルな食材が共演する限定メニュー

お茶漬けには嘉兵衛本舗の「お茶のはしっこ」を使用

イベントの目玉となる日本茶アンバサダー協会が監修の「江戸前クロダイ茶漬け(1,980円・ドリンクセット)」は、まさに「つなぐ」を象徴する一杯だ。

クロダイの梅生姜漬け:東京湾で獲れた未利用魚をベンナーズが加工。

茶がゆの茶:嘉兵衛本舗が、製造工程で出るお茶の端材を香ばしく仕上げた逸品。

・昆布茶:尾道の昆布問屋による「昆布のはしっこ」を使用したトッピング。

・里海米「きぬむすめ」:瀬戸内海の牡蠣殻を肥料として再利用し、環境に配慮して栽培されたお米。

安井氏は「お茶とお米の甘み、魚の滋味が最も引き立つ組み合わせを、関係者全員で追求しました。まずは出汁ではなく、お茶だけでお茶漬けを味わう贅沢を感じてほしい」と自信を覗かせる。

お茶が魚の旨味を引き立て、お茶自体もしっかり味わうことができる

満木氏も「世の中にあるお茶漬けと言うと、お出汁のお茶漬けが一般的だと思います。そちらも大変美味しいですが、やはり『お茶漬け』ですので、今回はぜひ『お茶』を伝えたいという思いがありました」と語り、「『お茶だけのお茶漬け』を実際にみんなで試食した時に、お米の甘みや『フィシュル!』のお魚の滋味、美味しさを引き立ててくれるのは、満場一致で『お茶』でした。まずは『これがお茶だけであること』を頭に置いていただけると、より美味しく召し上がっていただけると思います」とアピールした。

それぞれの地域課題へ取り組む中で生まれた新たな価値。私たちも食べることや購入することで地域の課題を知り、ほんの少しでもその問題解決に貢献できるかもしれない。

(取材・撮影/コティマム)