
観光や旅行は、地方や地域の魅力を存分に楽しめるまたとない機会だ。特に旅館やホテルはその日に滞在する場所として、特別な思い出になる。滞在を通してその土地の魅力を感じてくれる人が増えれば、“地域活性”や“地方創生”につながっていくだろう。
GENSEN HOLDINGS株式会社が運営する温浴施設ブランド・大江戸温泉物語は、経営破綻した旅館や不振の公共宿泊施設など地方の温泉宿を「居抜き」で再生させてリニューアル。思い立ったら利用できる料金設定が特徴の大江戸温泉物語のスタンダードシリーズや、プレミアムラウンジなどの施設を充実させた『大江戸温泉物語Premium』、最上位ブランド『TAOYA』などを全国に展開している。2026年9月時点で、東北から九州まで75店舗運営中だ。

筆者は今回、鳥取・米子市の皆生(かいけ)温泉にある鮮度抜群の豪華食材にこだわった『大江戸三つ星バイキング』を開催中の『大江戸物語 かいけ』を子どもたちと訪れた。かいけが地元の魅力をどのように活かしているかを紹介する。
鳥取は、『ゲゲゲの鬼太郎』を生み出した漫画家で妖怪研究家の水木しげる氏が幼少期を過ごした場所。米子市に隣接する現・境港市で少年時代を過ごし、この頃に語り聞いた妖怪話に強い影響を受けて育った。境港市には水木しげるロードや水木しげる記念館が建設されている。
ロコ・ラボでも既報しているが、鳥取は『ゲゲゲの鬼太郎』や『名探偵コナン』など、アニメとコラボレーションした誘客や魅力発信に力を注いでいる。

実際に筆者が米子駅に降り立った時も、JR米子駅の階段で鬼太郎が出迎えてくれた。

そして『大江戸温泉 かいけ』も、部屋全面が『ゲゲゲの鬼太郎』でデザインされた4つの『ゲゲゲの鬼太郎ルーム』で観光客を魅了している。

ホテルの入り口には鬼太郎の下駄のモチーフが鎮座し、子どもたちが無料で借りることができる鬼太郎のちゃんちゃんこも。

館内着の浴衣の上から羽織れば、鬼太郎の世界に入ったようだ。

館内のお掃除ロボットやアンケートボックスにもさりげなく鬼太郎が散りばめられ、お土産コーナーも鬼太郎グッズが目白押しだ。

そして4つの『ゲゲゲの鬼太郎ルーム』は大迫力。すでに全室満席だったので、今回の取材では宿泊客のチェックイン前に見学させてもらった。

ぬりかべがそのまま壁になっていたり、照明が唐笠小僧でおおわれていたり、ふすまや壁一面に一反木綿やろくろ首、子泣きじじい、ねずみ男や猫娘などが描かれていたりと、部屋全体が『ゲゲゲの鬼太郎』ワールドだ。

鬼太郎の下駄がテーブル、ちゃんちゃんこが座布団なのは4部屋共通だ。

和室だけでなく、ベッドのある洋室タイプもあり、広々としている。

ベッドに使われている布団はぬりかべだ。

子どもたちは4つの鬼太郎部屋に興味津々。しかし妖怪たちに見つめられ「ちょっと怖いかも」と緊張する場面も。筆者も「夜、ちょっとドキドキして寝られないかも」と思ってしまった。それくらい迫力のある、『ゲゲゲの鬼太郎』の世界観がたっぷり溢れるクオリティだった。

『大江戸温泉 かいけ』の魅力は、『ゲゲゲの鬼太郎ルーム』だけではない。目の前には皆生温泉海遊ビーチが広がり、雄大な日本海を眺めることができる。ちょうど海水浴も始まっていた時期で、多くの観光客が泳いでいた。
さらに皆生温泉は、お湯の質も高い。ナトリウム・カルシウム一塩化物質(高張性 中性 高温泉)など“三大美肌成分”が豊富で、保温や保湿効果が高いとされている。

大浴場は『大黒の湯』と『恵比寿の湯』の2つあり、日替わりで男女が入れ替わる。『大黒の湯』は岩風呂と内湯の2種類。
『恵比寿の湯』は広々とした内湯だ。

温度は高めで入った瞬間は熱く感じるが、不思議と息苦しさがなくすぐに身体が慣れた。熱いお湯の場合、すぐにのぼせて出たくなるが、この温泉はずっと浸かっていられるような心地よさがあった。

また『大江戸三つ星バイキング』ならではの醍醐味が、バイキング。かいけでは2026年4月8日からスタートした。

市場直送の真鯛やブリ、紅ズワイガニ、あわび・サザエの海鮮浜蒸しといった海の幸が目白押しだ。また黒毛和牛ロースの焼きすきなど山の幸も充実している。プチケーキやソフトクリームなどデザートも豊富だ。
さらに鳥取牛骨ラーメン、大山(だいせん)どりのレモンソース、20世紀梨ゼリーなどご当地の味も用意されているので、「鳥取にやって来た!」という実感もわく。また朝食も朝から食べきれないほどの充実したラインナップだ。夕食と同じく海鮮類が豊富で目移りしてしまう。

自分でカスタマイズできる海鮮丼や、自分の卓で焼いて食べる干物など、朝からワクワクする体験と共にお腹を満たすことができた。
今回筆者が宿泊したのは鳥取・かいけだが、大江戸温泉物語は全国にこうした宿泊施設を展開している。GENSEN HOLDINGSの担当者に話を聞いてみたところ、それぞれの地域に根づいた取り組みをしている様子が見えてきた。
――鳥取での運営を決めた理由や、どのように鳥取の地の利を生かしたか教えてください。

「鳥取・皆生温泉は、日本海を臨む絶景と質の高い温泉、そして『水木しげるロード』に代表される文化観光資源を併せ持つ、ポテンシャルの高いエリアです。オープン当時、この素晴らしい地の利を活かし、日本海のパノラマを一望できる『天空カラオケルーム』をはじめ、オーシャンビューのロケーションを活かした館内環境を整備しました。豊かな自然景観そのものを、“宿泊体験の価値”としてお客さまに提供しています」
――ゲゲゲの鬼太郎ルームを作ることになった背景や経緯は。
「『水木しげるロード』をはじめ、当地域は水木しげる先生ゆかりの地です。単に観光地を巡るだけでなく、『ホテルに戻ってからも鬼太郎の世界観に浸れる、この地域ならではの体験』をお届けしたく、企画しました。オープン当初から稼働も高く、大変ご好評いただいています」
――かいけだけでなく、東北から九州まで各地に展開されています。それぞれの地域の特色を活かすために工夫されている点や、地域の魅力発信のために意識していることはありますか。
「全国各地に宿を展開するにあたり、単なる『宿泊場所』の提供にとどまらず、『お客さまがその土地のファンになるための拠点』となることを目指しています。地域の魅力を最大限に引き出して発信するために、主に3つの軸で取り組んでいます。まずは、食文化の魅力を届ける『ご当地グルメ』の展開です。旅の醍醐味である『食』を通じ、その土地の歴史や風土を感じていただけるよう、一律のメニューではなく、県産品や郷土料理、旬の食材を積極的に取り入れたご当地メニューを提供しています」
――かいけにも、鳥取牛骨ラーメンや大山どり、20世紀梨などご当地料理がありました。

「そして2つめの取り組みは、空間で地域の魅力を表現する『コンセプトルーム』です。滞在時間を通じてその地域の象徴的な魅力に触れていただけるよう、客室空間の演出にも工夫を凝らしています。かいけの鬼太郎ルームも1つの例ですが、その他にも恐竜王国の福井県の施設では、恐竜をテーマにした『恐竜ルーム』を展開しています。客室に入った瞬間から、“その土地の物語”を感じていただける演出を行い、ファミリー層をはじめとする多くのお客さまに特別なワクワク感をお届けしております」

福井県の施設の『恐竜ルーム』
「また、今年度からの新たな取り組みとして、地域共創による『北陸ローカライズプロジェクト』を行っています。2026年度から、北陸エリアの各宿をモデル地区として、より地域に根ざした独自の体験やプランを創出する新プロジェクトを始動しました。地元の事業者さまと連携し、その土地、その施設ならではのプラン提供を目指しています」

「ホテルは単に眠るための場所ではなく、その土地のファンになってもらうための拠点である」――。今回の滞在と取材を通じて、筆者が最も強く感じたのは、GENSEN HOLDINGSが掲げるこの信念の重みだ。鳥取・かいけの場合、『ゲゲゲの鬼太郎』という地域の宝(文化)や、日本海の幸(食)といった地域の魅力を高純度で注ぎ込んでいる。その結果、宿泊客はただ「大江戸温泉物語に泊まった」という記憶だけでなく、「鳥取は楽しかった」「またこの街に来たい」という、地域そのものへの愛着を持ち帰ることになる。
ホテルが地域の魅力を最大化する“メディア”となり、訪れる人をその土地のサポーターに変えていく。こうした民間企業の熱意ある取り組みと、地元の事業者や自治体との「地域共創」が深まれば、地方創生はより持続可能で、ワクワクするものへと進化していくだろう。
(取材・文・撮影/コティマム)