大陸との交流が盛んになる奈良時代(710~784)に、シルクロードを経てペルシア、インド、中国などから書物や装身具、仏具などの文物が平城京に持ち込まれた。それらはモノ作りの技術も伝えた。奈良の職人たちは伝来の技術に独自の工夫を加え、洗練された工芸へ発展させる。それはやがて日本各地へと伝播した。
「日本の工芸のルーツは奈良にあるというのは、決して大げさな表現ではありません。日本の主要な伝統工芸の流れを辿たどると、ほとんど奈良に行き着くのです。正倉院に遺された宝物は、工芸文化の源泉といえます」と語るのは、なら工藝館館長の坂本曲齋(きょくさい)さんだ。
「正倉院には奈良時代に作られた筆や墨が収蔵されていますが、それが日本の筆記具の始まりとされています。天平文化が華開き、漢字の読み書きが浸透する中で発展した工芸ですが、実用性を備えた生活用具でもありました」
■なら工藝館
電話:0742-27-0033
住所:奈良市阿字万字町1-1
開館時間:10時~18時(入館17時30分まで)
休館:月曜(祝日の場合は開館、翌日休館)、12月26日~1月5日、臨時休館あり
交通:近鉄奈良駅より徒歩約10分