※この記事は@DIMEに掲載されたものです。
デロイト トーマツ グループ(以下「デロイト トーマツ」)は、デロイトが27か国、約2100名の企業経営者を対象に実施した、サステナビリティに関する取り組みや意識に関する調査について、日本の経営者139名の回答結果との比較をまとめた「2024年CxOサステナビリティレポート日本版」を発表した。
今回の調査結果からは、日本の経営者は気候変動などのサステナビリティの課題に関して、ビジネスモデルの変革を戦略の中核に据える割合がグローバルの経営者よりも高く、ビジネスにより直接的な変化をもたらすメリットを求めていることが明らかになったという。
一方で、目に見える変化に繋がるアクションへの着手は、グローバルに後れを取っていることも判明。
本稿では、そんな調査結果の概要を同社発行のリリースを元にお伝えする。
直近1年間において、日本とグローバルともに8割以上の経営者が、サステナビリティ投資を若干または大幅に増加させている(図表1)。
サステナビリティの課題に対するアプローチとしては、「気候変動などのサステナビリティの課題に対応するためにビジネスモデルを変革していくことが自社戦略の中核である」と回答した経営者の割合が、日本は55%で、グローバルを10ポイント上回った(図表2)。
サステナビリティ対応と、ビジネスモデル変革などの経営戦略を結びつけて考える経営者の割合が、グローバルと比較して高いことがわかった。
日本の経営者が、自社のサステナビリティの取り組みの一環として既に講じているアクションの上位は、よりサステナブルな原材料の利用や自然再生プロジェクトの実施など、比較的着手しやすいものが多い。
それぞれのアクションに取り組んでいる割合はグローバルをややリードしている。一方で、実行が非常に困難だが、目に見える変化に繋がるアクションの上位は、総じてグローバルよりも講じている割合が低い。
これらのアクションは、役員報酬とサステナビリティの実績の連動、気候変動の影響に対応する強靭なサプライチェーンの再構築、気候に配慮した商品・サービスの開発など、ビジネスモデル変革に結びつくものが多く、戦略に対してアクションが追いついていない状況が推察できる(図表3)。
日本の経営者が今後5年間でサステナビリティの取り組みに期待するメリットの上位は、サプライチェーンの効率化や既存ビジネスからの収益などであり、いずれもグローバルが期待する割合を上回っている。
今までのメリット上位にはロイヤルティや従業員のウェルビーイングなど、ブランディング観点でのメリットが含まれていたが、ビジネスにより直接的変化をもたらすメリットへと期待がシフトしている(図表4)。
デロイト トーマツ グループ パートナー
Sustainability&Climate Virtual Business Unit Leader
岩村 篤 氏
今回の調査では、日本の経営者は経営戦略としてのサステナビリティ対応への感度が高く、サステナビリティ投資にも積極的であるという結果が見られた。一方で目に見える変化に繋がるアクションへの着手はグローバルに後れを取っており、実際には取り組みやすいものに着手して満足している可能性がある。
事業・インフラ・サプライチェーンの再構築や、気候に配慮した新商品・サービスの開発など、実効性のあるアクションは中長期での取り組みや大きな投資が必要になるためにハードルが高い。
しかし、グローバルが先行してこれらのアクションにおける成果を生み出すようになると、日本の国際競争力低下に繋がる可能性があり、サステナビリティの実現と競争優位性の両観点から、これらのアクションを避けて通ることはできない。
サステナビリティ対応を単なるCSR活動として捉えるのではなく、事業や収益と直結する経営戦略として捉えるところまで視座が上がってきているのは良い兆候であり、今後は戦略に基づき実効性のある取り組みが展開されることに期待したい。
<調査方法>
本レポートは企業経営者2,103名(うち日本の経営者は139名)に対する調査を基にしている。調査はKS&R Inc.とデロイトによって2024年5月から6月にかけて実施された。調査対象の回答者は27か国にわたり、46%が欧州/中東/南アフリカ、26%が米州、28%がアジアパシフィック。全ての主要業界をサンプル抽出すると共に、KS&Rとデロイトは一部の世界の業界リーダーに対して一対一の面談を実施した。