1981年に創刊した、小学館のアウトドア情報誌『BE-PAL(ビーパル)』。キャンプ、車、田舎暮らし・移住など、毎号さまざまな特集を組みながら、一貫して「自然を楽しむ」をテーマに掲げています。
「日本はすごく自然が豊かだと思います。四季がありますし、同じ日本でも北と南とでもちがいます。急峻な山や川があって、海に囲まれて。生き物の種類が世界を見渡しても豊富ですよね。古くから自然のことを歌に詠んだり、庭に自然を移して楽しんだり、歴史的に見ても自然とともに生きてきた国といえるんじゃないでしょうか」。そう話すのは、学生時代ワンダーフォーゲル部で、自身も二拠点生活を送る沢木拓也編集長。今回は、『BE-PAL』が創刊当時から注目し続けている「田舎暮らし」や「移住」について、3つのキーワードとともに語ってもらいました。
長年メディアを続ける中で、創刊当初からとくに大きく変わったのは社会の状況です。沢木編集長は、それがアウトドア好きな人や田舎暮らしをしたい人にとっては追い風になっている、と言います。
「1983年の創刊2周年記念号では、いち早く注目して『田舎暮らし』を特集しました。その後も、『農園』特集を作ったり、『2拠点生活』、『移住と仕事』など田舎暮らしや移住をテーマにしたコンテンツを、創刊当時から今も変わらず発信し続けています。
BE-PALとしては、自然豊かな地域に移住して自然と遊びたい!という想いがずっとあるわけです。それが、この5年、10年の働き方改革や、コロナ禍でリモートワークが一般的になったこともあり、遠い夢ではなくなりました。以前なら、田舎暮らしは退職後、もしくは一念発起でしなきゃだったのが、今は二拠点生活や短期移住といったライフスタイルも増えています。これからももっと多様な“ライト移住”が増えていくと思います」
仕事への不安から、田舎暮らしに踏み切れない人もいるでしょう。しかし沢木編集長によると、「田舎には仕事がいっぱいあります!」とのこと。
「日本各地でますます過疎が進み、人手不足で困っている田舎は少なくありません。季節労働や、多能工の需要も増えています。働き方改革で、副業OKの企業もありますよね。たとえば、週3日はテレワークやオンラインで契約雇用。そこに地域での多様な労働も組み合わせるなど、自由な働き方ができるのも今の時代だからこそのスタイルだと思います」
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田舎暮らしへのハードルが下がった一方で、大事なのが「その地域を好きになること」。
「各地で耳にするのが、都会から逃げるように移住してきた人が地域になじまず、すぐに別の場所へ行ってしまう…というケース。案外少なくないようで、田舎の人からすれば、都会からきた人を歓迎できなくなってしまいます。
だからこそ、その地域を本当に好きになってから移住してほしいですね。そういう意味では、BE-PAL読者のような自然が好きな人は、移住との親和性が高いんじゃないでしょうか。
海があったほうがいいとか、この川があるからとか、この山が好きでとか、人によって好きな自然はちがいます。BE-PALでは、実際に訪れてその地域の自然の楽しさ、面白さを届けることで、読者の皆さんが心から好きと思える自然や、自然との過ごし方を見つけてもらいたい。そして、気に入って通ううちに、その地域に仲間ができたり、『ここに住んでみたい』と思える場所が見つかるかもしれません」
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編集部員も関わるスタッフも、読者とともに自然を楽しみながら、その魅力を伝え続ける『BE-PAL』。
確かな取材力にも定評のあるコンテンツで、全国各地の情報をお届けしています。
「今後も田舎暮らしの可能性を、いろいろな特集で伝えていきたい。移住したおもしろい方々も紹介していきたいと考えています。どうぞご期待ください」
取材・文/ニイミユカ 写真/黒石あみ(小学館写真室)