伝統工芸、地場産業、観光資源──地域の宝をどのように伝えれば人を動かせるのか?
創刊40年を迎えるビジネストレンドメディア『DIME』の編集長・石﨑寛明氏が、自らの経験と実例をもとに、自治体と組んで「読まれる仕掛け」を生み出す方法を語る。
ビジネスパーソンの知りたいモノ・コト・ヒトを深掘りし、仕事や暮らしに役立つ実用情報として読者に発信する「DIME(ダイム)」。1986年に創刊され来年で40周年の節目を迎えるビジネストレンドメディアの草分けである。
石﨑寛明編集長は雑誌『DIME』とWebメディア『@DIME』の編集長を兼任する。自治体とDIMEがコラボすることでどんな価値が生まれるかをテーマに、DIMEの地域創生との関りや編集長が考える新構想などを聞いた。
「DIMEのメイン読者は40~50代のビジネスパーソンです。地方発のご当地情報に関心が高く、毎号変わる特集に合わせて、地方初のヒット商品や注目スポットを積極的に記事で取り上げています。特にモノ・コトが生まれ成長していく背景にある物語に惹かれる方が多いです。記事づくりでは、単にモノ・コトを紹介するのではなく、ものづくりに関わった方への取材を盛り込みながら訴求することを大切にしています」
とりわけ読者の興味を引き付ける題材として石﨑編集長が挙げるのが、全国の自治体がもつ日本の技術力をテーマにした記事。「メガネの鯖江」や「デニムの児島」、「刃物の関」など、各地域で代々培われた職人技が支える「技術の町」は全国にあり、地域おこしのプロモーションをする際の大きなアドバンテージになると話す。
石﨑編集長も、2022年に大阪府八尾(やお)市でスタートした、八尾市デザインイノベーション推進事業「YAOKONTON」にメディアパートナーとして参加している。
「『YAOKONTON』は八尾市、京都芸術大学、電通、クリエイターたちが連携し「新しいモノづくり」をサポートする事業です。八尾市は町工場が多く、『モノづくりの町』として知られています。『YAOKONTON』では、企業からの受注生産をメインに行っていた町工場が自社で製品を開発し、盛り上がりを見せています。メディアパートナーとして彼らの取り組みを取材したり、対外発信のアドバイスなどを行いました」
DIMEでは、看板となる雑誌やWeb以外に、2024年から連載陣や第一線で活躍する著名人・ビジネスパーソンが一つのテーマに合わせてディスカッションするカンファレンス「DIME Business Trend Summit」も開催した。
「今年の2月には、山本一太群馬県知事とJINS田中仁代表取締役CEOによる『企業と自治体が地方を元気にするにはどうすればいい?』を議題にしたスペシャル対談を行いました。企業と自治体、著名人と自治体といったマッチングによって新しいアイデアを生み出すことはDIMEが得意としています。」
DIMEは毎号テーマを変えて特集を展開していることもあり、多くの企業とのコネクションや幅広いジャンルの識者とつながりがある。その知見や人脈をフルに使い、新しい企画を生んでいく試みとして自治体と企業に向けたレンタル編集部という思い切った施策も進めている。
「文字通り編集部員を派遣し、自治体や企業にアドバイザー、サポート役として企画段階から並走させていただく試みです。私たちの強みである企画力や編集力を存分に使ってもらって、ブレストやアイディア出しからメディアに向けた発信のアドバイスなどお手伝いできることならなんでもご協力します。リリースをブラッシュアップする提案もできますし、地方の可能性に興味をもつ首都圏の企業や著名人、さらに小学館の様々なメディアなど、DIMEがハブとなっておつなぎすることもできると思います。とことん編集部員を活用してほしいですね」
取材・文/安藤政弘 撮影/五十嵐美弥(小学館写真室)