青森県平川市では、若年層の流出が続き、子育て世代の定住促進が重要な課題となっている。医療費や給食費の無償化といった経済的な支援策はすでに打ち出してきたが、市民からは「日常の不便を軽減してほしい」という声も多かった。
そんな中、くらしの質向上に取り組むパナソニック(株)くらしアプライアンス社から「食洗機による家事負担の軽減と、家族との時間の増加」という提案が届いた。
平川市役所 みらい戦略室の福井秀巧氏は「子育て世代の声に応える新しい支援の形を探していた。パナソニックの提案は、まさに市の目指す方向と重なった」と振り返る。
2025年1月〜4月、抽選で選ばれた子育て世帯30世帯に食洗機をモニター配布し、その効果を調査。
結果は明快だった。85%が「家事負担が軽減された」と回答。さらに52%が「パートナーによる食器洗いの機会が増えた」と答え、44%が「食器洗い以外の家事・育児への参加も増えた」と実感した。
パナソニック 食洗機SBUの定方秀樹氏は「食洗機は“便利家電”というだけではない。セットしてスタートする行為そのものが“家事参加”を促し、夫婦の会話や感謝の気持ちにつながったのでは」と語る。
「子どもの話をゆっくり聞けるようになった」「一緒にお風呂に入れるようになった」など、時間に余裕が生まれたことで親子のコミュニケーションが増えたという声も寄せられた。
今回の取り組みでは、市民の声そのものが大きな成果だった。福井氏は「市民から『行政が家庭に寄り添ってくれた』という声をいただいたことが何より嬉しかった」と語る。
一方、パナソニックの熊倉健司氏は「子どもが食洗機に興味を持つなど、家族全体の関わりが増えた。“食器を洗う”以上の価値を実感してもらえた」と、企業としての手応えを語った。
平川市とパナソニックの協働は、単なる製品モニターを超え、「家事を社会課題として行政と企業が解決する」という新しいモデルを示した。
福井氏は「家事は家庭だけの問題ではなく、行政が関わるべき課題だと再認識した」と語り、定方氏も「効率的な家事支援が、家族や地域のウェルビーイングにつながる」と強調する。
両者は今後も連携を続け、地域に根ざした子育て支援のあり方を模索していく。福井氏は「この成果を市民全体に広げたい」と語り、定方氏も「平川市で得られた成果を全国の自治体にも展開していきたい」と展望を示す。
食洗機を通じて見えてきたのは、“便利家電”を超えて「家族をつなぐ社会的ツール」としての可能性。行政と企業が手を取り合うことで、市民のくらしの質を高める新しい支援の形が芽生え始めている。
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