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CanCam×地方創生の可能性──専属モデルが伝える“ふるさと”の魅力

2025/09/22

 

若い女性に圧倒的な影響力を持つファッション誌『CanCam』。
一見すると“地方創生”とは縁遠く見えるかもしれないが、いまその親和性が注目されている。

たとえば、2022年から毎年実施されている専属モデル・佐々木莉佳子さんが故郷・宮城県気仙沼を訪れる企画。CanCamのWebメディア『CanCam.jp』で配信され、毎回大きな反響を呼んでいる。
「CanCamが東北を取材?」──そんな意外にも思える企画の背景には、“地元を応援したい”という想いがあった。

『CanCam』の加藤真実編集長と、Webメディア『CanCam.jp』の渡邉恒一郎編集長に聞いた。

モデルの視点で“地元”を再発見する

専属モデルが故郷を訪ねたり、ずっと行ってみたかった場所を訪れたりすることで、読者にもその土地の魅力が届く。そんなふうに地域の魅力を伝える企画は、CanCamだからこそできることだと思っています」
そう語るのは、雑誌『CanCam』の加藤編集長。

佐々木莉佳子さんが気仙沼を訪ねる企画は、花王が協賛する震災復興プロジェクトの一環として始まり、2024年で3回目を迎えた。記事では、地元のご当地アイドル「SCK GIRLS」の初代メンバーとして活動を始めた佐々木さんが、気仙沼での原点を語り、モデルとして成長してきた姿をインタビューで丁寧に振り返った。

加藤編集長は「若い世代に地元を好きになってほしい」という花王の想いに共感し、「CanCamとしても応援できることがあるのではと感じた」と語る。

気仙沼出身の佐々木莉佳子さんが地元を訪れることで、より多くの若者に地域の魅力を伝えたい──そんな思いから企画は続いている。

2024年の記事では、佐々木莉佳子さんとSCK GIRLS3代目リーダーまりかさんが対談。

地方に行きたくなる効果

『CanCam.jp』の渡邉編集長は、モデルの存在が地域に与える影響についてこう語る。

専属モデルが訪れた場所は、読者にとって“行ってみたい場所”になります。CanCamには、そんな影響力があります」

例えば2023年に専属モデルを卒業した中条あやみさんの卒業メモリアル号では、自身が「ずっと行きたかった」と熱望していた香川県の直島でロケが行われた。直島は人口3000人ほどの小さな島だが、美術館やアート作品が点在する“アートの島”。そこを中条さんが訪れて島の魅力を発信することは、若い世代への強いアピールとなった。

渡邉「昨年CanCamモデルを卒業したトラウデン直美さんが、『トラウデン直美と考える私たちと『SDGs』』という連載をしていて、その中で徳島県神山町に行きました。神山町は若い世代の移住者が急増していて、SDGsを体現するさまざまな試みを行う自治体として注目を集めています」

トラウデン直美さん本人の希望で、「地方創生の聖地」徳島県神山町へ。

地方の大学とコラボする「CanCam視点の大学案内」

CanCamと地方を結びつける試みは、大学とのコラボという形でも実現している。

加藤「2019年には、京都の同志社大学と組んで、訪日外国人向けのガイドブックを作成しました。また、宮城学院女子大学との連携で、キャンパスライフと仙台の魅力を伝える小冊子を作ったこともあります」

地域の学生にとっては雑誌制作の実地体験になり、メディア側にとっても地元のリアルな視点を得られる貴重な機会になったという。

「大学との連携は、お互いに学びがある取り組みなんです」とCanCamの加藤編集長。

ナイトプールも「地域イベント」になりうる?

CanCamが毎年夏にプロデュースする「ナイトプール」。通常は東京プリンスホテルでの開催だが、2019年には東京を飛び出し、広島での開催が実現した。

渡邉「広島での開催はさまざまな縁があって実現できました。本当は我々も地方創生に協力する形で全国展開したい気持ちもあります。東京だと平日でも会社帰りに足を運ぶという集客も可能ですが、地方ではこの点は難しい。地方の場合は、例えば車でいける場所で開催して、若い女性だけではなくファミリー層もターゲットにするという方法もありそうです。そういった取り組みをご一緒に考えながら、地域を盛り上げるお手伝いをしたいですね」

現在CanCamは雑誌媒体を主幹に、Webメディア「CanCam.jp」も運営。
雑誌は加藤真実編集長、CanCam.jpは渡邉恒一郎編集長が担当する。

渡邉「2つメディアがあるという感覚ではなく、根幹となる雑誌制作を加藤が担い、僕がインターネットでさらに媒体の情報を広げていくイメージです。読者層はほぼ同じで、どちらも20歳から25歳ぐらいの女性がメインターゲットです。トレンドに敏感で、社会に関心が高く、将来のキャリアや暮らしについて真剣に考えています

ファッションのトレンドは変わっても、CanCamの根底にある“明るくポジティブなマインド”は変わらない。だからこそ、地域の魅力を前向きに伝え、若者の共感を得る力がある。

「地方ならではのイベントも、ご一緒に考えていきたいですね」とCanCam.jpの渡邉編集長。

CanCamの力で、地方に“行きたくなる”を生み出す

現在のCanCam専属モデルは8名。さらに、CanCamの誌面やSNSで活躍する読者モデル・インフルエンサー集団「CanCam it girl (イットガール)」は、日本全国に約50名いる。

今後の展望について、渡邉編集長はこう語る。

渡邉「これまでのようなガイドブック制作や地域ロケだけでなく、たとえば地方でCanCamのイベントを開催したり、it girlたちと連携した発信企画を行うことも可能だと思っています。CanCamの持つ発信力を、地方創生のパートナーとしてもっと活用していけたらうれしいです」

取材・文/高山 惠 撮影/黒石あみ(小学館写真室)