『旅』『食』『歴史』を通じて、大人の知的好奇心を刺激してきた『サライ』。
いま、リニューアルを経て読者層が広がっています。吉尾拓郎編集長に、地域との関わり方と“伝える力”について聞きました。
2024年10月に吉尾編集長が就任し、誌面リニューアルを行って約半年。ミドル層への働きかけが功を奏し、読者は若い世代にも広がっている。
「サライをシニア誌と受けとられている方も多いと思います。私が編集長になった時には、読者の中心は60代でしたが、現在は30代・40代の読者が目に見えて増えてきました。女性読者の比率も上がり、以前は3割弱だったのが、現在は4割近くを占めることもあります。蔦屋重三郎が生んだ「出版文化」 (2025年2月号)は、特に女性読者からの反響が大きかったですね。自分としても誌面作りにしっかりとした手応えを感じています。私は中学生の時に父親が買ってきたサライ創刊号を読んで読者となり、サライの編集者を目指して小学館に入社したほど愛着を持っていますが、当時、父も30代後半でしたから、必ずしもシニアの雑誌という意識はなかったので、自分の思っていたサライに一歩近づいた実感はありますね」
リニューアルにともない編集面ではビジュアルを強化し、美しい写真をより大きく使うことでインパクトある誌面作りを行っている。
「私が初めてサライを読んだ時に受けた衝撃が迫力ある料理写真でした。その写真に触発され、高校時代に料理人になりたいと思っていたのが、編集者を目指すようになりました。そんな経験もあって、今は写真を贅沢に美しく使うことを意識しています。情報の充実を大切にしてきた誌面に、あらためて写真の力を加えることで、自然の美しさや料理のおいしさがさらに伝わりやすくなり、これが読者層が広がった大きな要因と捉えています」
シニア雑誌からミドルエイジ雑誌にシフトしたのではなく、シニアからミドルエイジまで広く楽しめる雑誌に転換したと吉尾編集長は言う。
「ライフスタイルや趣味の多様化によって、今の時代、年代別で読者ターゲットを設定することはできないと考えています。いくつになっても、常に前向きに自分の生き方を探し、知識豊富で、知的な探究を続けている方は、これからも本誌のコア読者層です。しかし、若い世代で同じように知的好奇心旺盛な方は多くいらっしゃいます。年齢ではなく、知的好奇心の高い人たちともコンタクトを取りながら、喜んでいただける誌面を作りたいという気持ちが強いですね」
サライは地方創生とリンクできるテーマに満ち溢れているが、地方の情報に興味のある読者に世代はない。新生サライでは、地方の魅力をより多くの人たちに届けることを実現している。
「地方の新しい魅力を世の中に発信できる一つのチャンネルとして捉えていただき、地域活性化したい、創生したいという自治体や企業のご担当様は、サライにまずご相談をいただければと思います。実際に地方の自治体との協業もずっとやってきましたから、実績もすぐにご提示できます。わたしは、企画を考えることが好きなので、“イチから切り口を考えて”というご注文をいただくとむしろ奮起するタイプです。ですので、あまりはっきりと方向が決まっていなくても、気軽にお声がけいただければ、テーマに沿ってさまざまな視点からご提案できると思います」
2025年6月号の「離島」へは、吉尾編集長の地方創生への思いが詰まった特集だ。自身も離島に出向き、地元の人たちと語らい、酒を酌み交わした。
「編集長に就く前から動き始めていたのがこの離島企画です。私が離島好きということもありますが、各自治体にお声がけしたところ反応がすこぶるよく、タイアップをいただいた自治体もありますし、企画に賛同された企業からは想定以上の出稿もいただきました。改めて地方文化とサライの相性のよさを実感しましたね。これからも地方創生につながる企画を誌面で積極的に仕掛けていきますのでご期待ください」
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取材・文/安藤政弘 撮影/田中麻以 (小学館写真室)