※この記事はHugKum(はぐくむ)に掲載されたものです。

小学校では2011年度より「外国語活動」が実施され、2020年4月から、小学校で外国語を教科として学べるようになりました。学習指導要領で共通の内容が示されますが、これのほかに、自治体による独自の英語活動などが学校で行われることもあります。子どもたちが英語に慣れ親しみ、英語に触れることのできる環境を整え、英語によるコミュニケーションを積極的に図る態度やコミュニケーション能力の育成を目指し、体験活動を重視した町田ならではの英語教育を推進しています。その一つとして「放課後英語教室」も実施しているんです。
町田市では、東京都で10地区ある「英語教育推進地域」の一つとして様々な特徴的な取り組みを進めています。3,4年生向けのオリジナル教材を使っての正規の授業も評判ですが、「放課後英語教室」も実施しているんです。「えいごのまちだ」ではどんな英語を学べるのか、実際に「放課後英語教室」を見学してみました!
町田市では「えいごのまちだ」をキャッチフレーズに、小学校での工夫をこらした活動を実施しています。授業においては、すでに2009年よりNHK Eテレ「えいごであそぼ」の総合指導者でもある玉川大学名誉教授・佐藤久美子先生によるカリキュラムを3、4年生の授業で使用。外国人のALT(外国語指導助手)は授業だけではなく休み時間や給食の時間にも子どもたちと接してくれます。
そして、親御さんにとっても子どもにとってもうれしいのは、正規の授業とは別に、放課後に無料の英語教室があることです。こちらも佐藤久美子先生のカリキュラムで、楽しくて「話せる」教室だと、地元で評判なのです。
町田市の「放課後英語教室」は、2~5年生の希望者を対象に全12回、16~18人程度の少人数で行うもの。英語の指導資格を持った講師によるプログラムは正規の授業とはまた違う内容で、歌や動画、絵本読み、体を動かすなどいろいろなアクティビティを通して楽しく英語でのコミュニケーションを学べます。

さっそく、町田市の三輪小学校の放課後英語教室を見学してきました。この日はふたりの先生が担当。14:40~15:25には2年生と3年生、15:35~16:20には4年生と5年生の教室を実施していました。
まずは2年生のクラスを見学。三々五々集まってきた子どもたちに先生は“Hi! “”Hello”と英語でそれぞれの名前を呼びながら声をかけます。正規の授業は3~6年生なので、先生に声をかけられた2年生は授業としての英語は未経験。でも、ドギマギせずに堂々とあいさつを返します。
このクラスを受け持つのは、三浦友子先生。ご自身が帰国子女でバイリンガル、英語教育20年以上の経験を持つベテランです。2016年に放課後英語教室が始まって以来、ずっと町田市の講師を続け、他地区を含めて正規の授業の講師も務めています。

ローマ字で書いた自分の名前の紙をテープで衣類の袖に貼りつけてから授業開始。三浦先生のレッスンは約束事や特別な注意事項以外に日本語は使わず、すべて英語。大きなモニターに映し出された動画などを見せながら、児童たちに英語で語りかけます。
正規の授業でもこのレッスンでも、まずは話そう、声を出そうというのが主眼です。文部科学省による3,4年生での 正課の「外国語活動」 の目標は、「言語活動を通してコミュニケーション能力の素地となる資質・能力を育成すること」。「聞くこと」「話すこと[やりとり]」「話すこと[発表]」の3領域を学びます。放課後英語教室でも、2~4年生は先生の英語を聞き、自分たちも話し、英語でキャッチボールをすることが目標です。
歌もふんだんに使います。英語でただ声に出して歌うだけでなく、身振りをつけるように工夫されていました。『Coconut Song』ではCは頭の上に手をかざしCの形を作り、Oは頭の上で手を丸にして…と。YMCAの歌のように身振りをつけると、英語のスペルを自然に覚えられるのだな、と実感します。


その後、
●What color do you like?
○I like (pink)
●Wow! / That’s great!
と掛け合いのようにやりとりしながら発話するレッスン。pinkの部分には自分の好きな色を入れて話します。
◯I like red
●Wow! / That’s great!
こんなふうにリアクションしてもらえると、うれしくなりますよね。やりとりを通して、英語の楽しさを味わいます。

その後はさまざまな色を画面に英文字で表し、
I like pink. I like red. I like green.
などと声に出していきます。そのときに三浦先生が歌ではなく、ラップのようにメロディをつけずに一定のリズムに単語や英文を乗せて発音します。このような発音のしかたを「チャンツ」と言うのだそうです。子どもたちも一緒に「チャンツ」で発音していくと、だんだんリズムに乗ってきて、肩のあたりを動かしたり、机の下で、足でリズムを取ったり。表情も笑顔になっていき、体全体で英語を楽しんで発音しているのがわかります。
最後はGoodbye Songを歌いながら授業が終わります。

15:35からは、4年生の授業が始まります。やはり名札の紙を袖につけて席に座ります。このクラスも歌や動画を使いながら、親しみやすい英語を話していきます。
すると、大きなモニターに、サッカーのユニフォームを着て頭が鳥になっているキャラクターが! ゼルビーといって、町田に本拠を置くFC町田ゼルビアのマスコットキャラクターです。「ゼルビーくんにきいてみよう!」と、
Can you fly?
Are you a duck?
などなど質問が映し出されます。そしてその後に、人気選手も登場するのです!


町田の放課後英語教室では、FC町田ゼルビア トップチームの選手を授業教材に起用。選手たちが、英語で自己紹介ビデオも提供してくれています。さらに、体を動かしながら自然に楽しく英語をインプットする英語学習プログラム「spoglish(スポグリッシュ)」(spoglishGYM代表、藤野素宏氏とコラボ)を導入し、英語活動に生かしています。
「放課後英語教室に参加できてとても光栄です。選手たちもノリノリで撮影に参加しています。英語学習に多少抵抗があるお子さんでも、授業内で動きが入ることやFC町田ゼルビアの選手が登場することでハードルを下げ、楽しく取り組んでいる様子も見られてうれしいです」(FC町田ゼルビア地域振興部部長・野村卓也さん)

そしてお次は、スーパーマーケットで売っているものとして、野菜の名前を勉強します。tomato, onion, cabbageなどイラストとともに親しみのある野菜が紹介され、2年生と同様、チャンツでリズムに乗せて発音していきます。

最後はワークブックを広げて野菜を入れ込んだ絵を描きます。顔に見立てて野菜を顔にあてはめていくなど、それぞれの個性あふれる絵が完成したら、三浦先生がひとりひとりに「Wow!」「Good! 」などと言いながら二重丸をつけていきます。
45分という短い時間の中に、英語を聞く、話す要素がギュッと詰まっていて、内容も豊富。
授業を担当する三浦友子先生はこう言います。

「放課後英語教室は、大きなモニターに映し出される画像や動画に、たくさんのアクティビティを入れています。いわゆる座学とは違って、英語の指示で体を動かしたり、ジェスチャーをつけて歌ったりして体を使いますし、書くことにしても、こうしたアクションと連携させています。
また、ただ講師の言うことをリピートするのではなくて、自分のことを発表する力もつけます。発表して「Great!」などと言われるので、うれしく思ってくれるのではないでしょうか。ほめられてうれしく、間違えてもOK。英語に対して自信がつくと思います」(三浦友子先生)
5年生ではこれ以外に英語を「読む」「書く」要素ももっとたくさん加わり、正規の授業のサポートとしても放課後英語教室はしっかり機能してくれています。5年生、6年生では正規の英語で成績評価もつくので、こうして放課後で学ぶことで、評価もよくなりそう!
こんなに楽しく身につく英語を、無料で学べるのは本当にありがたい。町田の子どもたちがうらやましくなりました。
――後編では、町田の放課後英語教室での効果を、教材を作った佐藤久美子先生(玉川大学名誉教授)に解説していただき、私たちが普段の生活の中に効果的に英語を取り入れる工夫も伺います!
町田市全40校の2年生~5年生、各学年16~18名ずつ、およそ2500名の児童が、放課後に自分たちの通う小学校に残り、英語のプロの講師からレッスンを受ける。「えいごのまちだ」を目指す町田市の中心的な事業。